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狼に囚われた姫君の閨房録
第18章 禁門の変
元治元年、七月十九日の朝である。
雲一つない快晴だ。夏の陽射しが地上を焦がしている。蝉時雨が降り頻るなか、新選組は出動していった。
京都御所を護衛しろと、容保様の命令が下ったのだ。八一八の政変で京を追い出された長州藩が舞い戻ってきたのであった。
隊列を見送ると、私は総司の寝所に戻った。
「ちくしょう!悔しい〜っ!!」
庭先で、平助が雄叫びを上げていた。
理由はわかっている。今回の戦に参戦できないからだ。
「うるさいなあ。平助は池田屋で怪我したんだから、仕方ないじゃない。おとなしく、留守番してれば?」
縁側で宥めているのは、総司だ。最近、体調が良いらしく、よく縁側でまったりしている。
「新兄ぃだって、怪我してたのによ〜」
「新兄さんは軽傷だったからね。平助は戸板で運ばれてきたでしょ?」
「あれは、無理やり……」
「それを拒めなかったくらいの深傷だったんだよね」
平助は言葉に詰まったらしい。実際、平助は意識混濁した状態で担ぎ込まれたのである。
頃合いを見計らって、私は口を挟んだ。
「兄上さまたち、スイカはいかがですか?井戸で冷やしてあるんですよ」
「いいね、暑い時にはぴったりだ」
総司が声を弾ませ、平助も縁台におとなしく座った。
「スイカのやけ食いといくか。切ってきてくれ」
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