この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
狼に囚われた姫君の閨房録
第26章 一との逢瀬

表通りに並ぶ屋台には、人だかりができていた。送り火を見ながら、軽く食べるのだろう。
おそばの屋台に、団子の屋台。お寿司の屋台もあった。
私はお団子の屋台を覗いた。
「へい、らっしゃい!」
鉢巻をしめたいなせな男の人が私を迎えた。
あん団子や蓬団子、三色団子が並んでいる。炭火の上では、蓬団子が焼かれていた。
「なんにする?ちょうど、よもぎが焼けたけど、持っていくかい?」
「じゃ、それを」
焼き立ての蓬団子を皿に乗せると、男性は番茶をつけた。
「お茶はおまけだ。嬢ちゃん、美人だからよ」
「ありがとうございます」
私は代金を支払うと、団子の皿と湯呑みを手に、屋台を出た。
と同時に、群衆から歓声が上がった。私は反射的に大文字山を見た。
『大』の字の点火が始まった。
広場に大勢の人が集まっている。縁台がいくつも出ていた。
私も、その一つに座った。
炎が少しずつ山の斜面に『大』の字を書いていく。薄闇の中で、その明るさだけが際立つ。
なんて、厳粛な光景なんだろう?
(綺麗……)
団子の串を持ったまま、私はうっとりとした。
五山の送り火を見物するのは初めてだ。こんなにのんびりとするのも、久しぶりである。
(一兄上様……どうなさってるかな?)
一も、どこかで、この送り火を眺めてるかもしれない。そう思った時、
「ひゃっ」
私はいきなり背後から抱きしめられた。
おそばの屋台に、団子の屋台。お寿司の屋台もあった。
私はお団子の屋台を覗いた。
「へい、らっしゃい!」
鉢巻をしめたいなせな男の人が私を迎えた。
あん団子や蓬団子、三色団子が並んでいる。炭火の上では、蓬団子が焼かれていた。
「なんにする?ちょうど、よもぎが焼けたけど、持っていくかい?」
「じゃ、それを」
焼き立ての蓬団子を皿に乗せると、男性は番茶をつけた。
「お茶はおまけだ。嬢ちゃん、美人だからよ」
「ありがとうございます」
私は代金を支払うと、団子の皿と湯呑みを手に、屋台を出た。
と同時に、群衆から歓声が上がった。私は反射的に大文字山を見た。
『大』の字の点火が始まった。
広場に大勢の人が集まっている。縁台がいくつも出ていた。
私も、その一つに座った。
炎が少しずつ山の斜面に『大』の字を書いていく。薄闇の中で、その明るさだけが際立つ。
なんて、厳粛な光景なんだろう?
(綺麗……)
団子の串を持ったまま、私はうっとりとした。
五山の送り火を見物するのは初めてだ。こんなにのんびりとするのも、久しぶりである。
(一兄上様……どうなさってるかな?)
一も、どこかで、この送り火を眺めてるかもしれない。そう思った時、
「ひゃっ」
私はいきなり背後から抱きしめられた。

