この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
狼に囚われた姫君の閨房録
第29章 近藤勇、狙撃

慶応三年十二月十八日。
蒼白い月が浮かび、夜風が柔らかい宵であった。
戦が近くなり、新選組は伏見奉行所に陣を移していた。
私は厨房で寄せ鍋を作っている。
二条城の会議に赴く前に、父はこう言った。
「今夜は熱い鍋がいいな。お偉方との合議は肩が凝ってならん」
疲れて帰営する父に、少しでも美味しいものを食べさせたい。私は張り切った。
鰹節で出汁を取り、白菜、豆腐、こんにゃく、ネギを醤油で煮込む。
(練り物も入れようかな?)
私がお鍋を用意したと知ったら、きっと父は喜んでくれるだろう。喜ぶ顔を早く見たい。
そこへ、ドタドタと走り回る音がした。怒声にも似た叫び声もする。
「二番組、集合!俺に続け!!」
これは新八の声か?
「やったのは、伊東派の残党だ。皆殺しにしてやれ!」
歳三の大声が続いた。何かあったのだ。
私が割烹着のまま厨房を出ると、左之助と鉢合わせした。
「親父さんが銃で撃たれた!」
「えっ!?」
「今、松本先生が治療してる!急所は外れているが、やばいかもしれねえ」
「そんな……」
ぐらりと私の体が揺れる。
「しっかりしろ」
私の両肩を左之助はガッチリと抱えた。
「親父さんは昏睡状態だが、顔は見れる。行くか?」
小刻みに震えながら、私は頷いた。左之助は私の肩を抱き、父の病間に連れて行ってくれた。
蒼白い月が浮かび、夜風が柔らかい宵であった。
戦が近くなり、新選組は伏見奉行所に陣を移していた。
私は厨房で寄せ鍋を作っている。
二条城の会議に赴く前に、父はこう言った。
「今夜は熱い鍋がいいな。お偉方との合議は肩が凝ってならん」
疲れて帰営する父に、少しでも美味しいものを食べさせたい。私は張り切った。
鰹節で出汁を取り、白菜、豆腐、こんにゃく、ネギを醤油で煮込む。
(練り物も入れようかな?)
私がお鍋を用意したと知ったら、きっと父は喜んでくれるだろう。喜ぶ顔を早く見たい。
そこへ、ドタドタと走り回る音がした。怒声にも似た叫び声もする。
「二番組、集合!俺に続け!!」
これは新八の声か?
「やったのは、伊東派の残党だ。皆殺しにしてやれ!」
歳三の大声が続いた。何かあったのだ。
私が割烹着のまま厨房を出ると、左之助と鉢合わせした。
「親父さんが銃で撃たれた!」
「えっ!?」
「今、松本先生が治療してる!急所は外れているが、やばいかもしれねえ」
「そんな……」
ぐらりと私の体が揺れる。
「しっかりしろ」
私の両肩を左之助はガッチリと抱えた。
「親父さんは昏睡状態だが、顔は見れる。行くか?」
小刻みに震えながら、私は頷いた。左之助は私の肩を抱き、父の病間に連れて行ってくれた。

