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狼に囚われた姫君の閨房録
第30章 総司、危篤に陥る

「熱が下がらない……?」
総司危篤の知らせを受けて、私は病床を訪れた。すっかり痩せ細った総司は、額に濡れ手拭いを乗せて寝ていた。
慶応四年の正月。京では、鳥羽伏見の戦いが開始された。
総司が体調を崩したのは、その直後であった。
「今宵が峠となりましょう」
総司の胸に聴診器を当てていた良順が呟いた。
総司のはだけた胸は薄く、肉がすっかり削げ落ちている。呼吸も浅く、速い。
「肺が炎症を起こしています。解熱剤を飲ませましたが、一両日熱が下がらなければ、あるいは……」
「……あるいは?」
「お覚悟……あるように」
私はその場に座り込んだ。今の総司には肺炎に耐えられるだけの体力がない。
『僕が死ぬときは戦場だよ』
口癖のように、総司は言っていたのに。斬り合うことなく、逝ってしまうの?
「手前は近藤どのを診るのでいきますが、姫は……?」
腰を上げる良順に、
「……このまま、います」
私の声が震えた。
「最期ならば……せめて看取りとうございます。戦場の兄たちの代わりに……」
鳥羽伏見の戦いの戦況は芳しくないと聞いている。倒幕派は銃で武装しているそうな。大砲も西洋式の巨きなものだという。
どう頑張っても、私は戦力にはならない。ならば、やれることをすべきだろう
総司危篤の知らせを受けて、私は病床を訪れた。すっかり痩せ細った総司は、額に濡れ手拭いを乗せて寝ていた。
慶応四年の正月。京では、鳥羽伏見の戦いが開始された。
総司が体調を崩したのは、その直後であった。
「今宵が峠となりましょう」
総司の胸に聴診器を当てていた良順が呟いた。
総司のはだけた胸は薄く、肉がすっかり削げ落ちている。呼吸も浅く、速い。
「肺が炎症を起こしています。解熱剤を飲ませましたが、一両日熱が下がらなければ、あるいは……」
「……あるいは?」
「お覚悟……あるように」
私はその場に座り込んだ。今の総司には肺炎に耐えられるだけの体力がない。
『僕が死ぬときは戦場だよ』
口癖のように、総司は言っていたのに。斬り合うことなく、逝ってしまうの?
「手前は近藤どのを診るのでいきますが、姫は……?」
腰を上げる良順に、
「……このまま、います」
私の声が震えた。
「最期ならば……せめて看取りとうございます。戦場の兄たちの代わりに……」
鳥羽伏見の戦いの戦況は芳しくないと聞いている。倒幕派は銃で武装しているそうな。大砲も西洋式の巨きなものだという。
どう頑張っても、私は戦力にはならない。ならば、やれることをすべきだろう

