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狼に囚われた姫君の閨房録
第34章 近藤勇、処刑

若葉の匂いがする風が通り抜ける。ツバメが窓の外を飛び、河原で子供達の遊ぶ声がした。
「お嬢さん、入りますよ」
四月二十五日の午前。
情報収集していた主計が、逗留している木賃宿に戻ってきた。
「お疲れ様。どうでした?」
「辻に立ててあった高札を見てきました」
主計は自分で急須から茶を注いだ。一息で飲み干し、続けた。
「局長が今夕、処刑されます。斬首だそうです」
「斬首だあ?腹を切るんじゃねえのかよ!?」
利三郎が絶叫したが、私は予想がついていた。
近藤勇は賊軍の頭だ。武士として名誉な死など、望むべくもない。
「……場所は?」
「板橋です。おそらく、急拵えの刑場かと」
「正式な処刑場ですらねえって……馬鹿にしすぎだろ」
利三郎は言葉もないらしい。
私はゆらりと立ち上がった。
「そこへ、案内してください」
「行くつもりですかっ」
主計が驚きの声を上げ、利三郎も叫んだ。
「やめとけ!見ねえ方がいい」
「親を看取るのは娘の務め。死に水をとれないなら、せめて勇姿を目に焼き付けたいのです」
「後悔しねえか?」
利三郎に念を押され、私は唇を強く結んだ。
父の首が足元に転がっても、動揺するものか。私は大老の姫、新選組局長の娘なのだから。
「お嬢さん、入りますよ」
四月二十五日の午前。
情報収集していた主計が、逗留している木賃宿に戻ってきた。
「お疲れ様。どうでした?」
「辻に立ててあった高札を見てきました」
主計は自分で急須から茶を注いだ。一息で飲み干し、続けた。
「局長が今夕、処刑されます。斬首だそうです」
「斬首だあ?腹を切るんじゃねえのかよ!?」
利三郎が絶叫したが、私は予想がついていた。
近藤勇は賊軍の頭だ。武士として名誉な死など、望むべくもない。
「……場所は?」
「板橋です。おそらく、急拵えの刑場かと」
「正式な処刑場ですらねえって……馬鹿にしすぎだろ」
利三郎は言葉もないらしい。
私はゆらりと立ち上がった。
「そこへ、案内してください」
「行くつもりですかっ」
主計が驚きの声を上げ、利三郎も叫んだ。
「やめとけ!見ねえ方がいい」
「親を看取るのは娘の務め。死に水をとれないなら、せめて勇姿を目に焼き付けたいのです」
「後悔しねえか?」
利三郎に念を押され、私は唇を強く結んだ。
父の首が足元に転がっても、動揺するものか。私は大老の姫、新選組局長の娘なのだから。

