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狼に囚われた姫君の閨房録
第42章 新選組、解散

「お嬢さん……」
私の傷も癒えた頃、主計が診療所を訪れた。断髪令で髪は短く、見窄らしい灰色の服を着ていた。
「行くんですね?」
主計は江戸の牢に送られる。幕軍の残党は処罰され、主計も例外ではない。
なのに、私は不思議なほど悲しくもなんともなかった。
「ええ、お別れです」
主計は私を強く抱きすくめた。私は主計の背中に手を回す。
「体に気をつけて」
「お嬢さんも、息災で」
抱きあったまま、息を感じるほど互いが近い。二人の唇が重なる。
「大丈夫ですか?お嬢さんの唇……やけに冷たい」
「蝦夷地は冷えるから」
「体も冷え切ってますよ」「蝦夷地だもの」
「色も白すぎます。病的な白さだ」
「蝦夷地……」
私は言葉を切った。私、同じことしか言ってない。
なんだろう?この感じ。
自分が自分でないみたいな……遠くで自分を見てるみたいな浮揚感は……?
「しっかりしてください」
主計は私の両肩を掴んだ。
夢の世界を揺蕩っているようで、何も感じない。
「副長たちが亡くなって、修羅の魂が解放されつつあります。今までは副長たちが抑えましたが、もはや枷はない。お嬢さんはご自分でご自身を制さなくてはなりません」
修羅の魂?修羅ってなんだっけ?
大切なことだった気がするけど……頭の中に霞がかかったようで、よくわからない。
「お嬢さん!」
主計の声が遠くで響いた。
「もう行かなきゃなりません!気を確かに持ってください!!修羅の魂なんかに負けないで!!!でないと、国が滅ぶことに……」
その言葉はもはや、私には届かなかった。
封印を解かれた修羅の魂。徐々に、私の意識を支配しつつあった。
私の傷も癒えた頃、主計が診療所を訪れた。断髪令で髪は短く、見窄らしい灰色の服を着ていた。
「行くんですね?」
主計は江戸の牢に送られる。幕軍の残党は処罰され、主計も例外ではない。
なのに、私は不思議なほど悲しくもなんともなかった。
「ええ、お別れです」
主計は私を強く抱きすくめた。私は主計の背中に手を回す。
「体に気をつけて」
「お嬢さんも、息災で」
抱きあったまま、息を感じるほど互いが近い。二人の唇が重なる。
「大丈夫ですか?お嬢さんの唇……やけに冷たい」
「蝦夷地は冷えるから」
「体も冷え切ってますよ」「蝦夷地だもの」
「色も白すぎます。病的な白さだ」
「蝦夷地……」
私は言葉を切った。私、同じことしか言ってない。
なんだろう?この感じ。
自分が自分でないみたいな……遠くで自分を見てるみたいな浮揚感は……?
「しっかりしてください」
主計は私の両肩を掴んだ。
夢の世界を揺蕩っているようで、何も感じない。
「副長たちが亡くなって、修羅の魂が解放されつつあります。今までは副長たちが抑えましたが、もはや枷はない。お嬢さんはご自分でご自身を制さなくてはなりません」
修羅の魂?修羅ってなんだっけ?
大切なことだった気がするけど……頭の中に霞がかかったようで、よくわからない。
「お嬢さん!」
主計の声が遠くで響いた。
「もう行かなきゃなりません!気を確かに持ってください!!修羅の魂なんかに負けないで!!!でないと、国が滅ぶことに……」
その言葉はもはや、私には届かなかった。
封印を解かれた修羅の魂。徐々に、私の意識を支配しつつあった。

