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狼に囚われた姫君の閨房録
第12章 新見錦の粛清
瓦屋根を叩く強い雨音に、私は目を覚ました。
火灯窓から覗く外は仄暗い。どこかで、遠雷がした。雨戸のガタガタと軋む音がする。
(どこだろう……) 
寝転がったまま、私は頭を巡らせた。
うず高く積まれた書物。鹿の角の刀架けにかけられた二振り。棚に並べられた液体の入った硝子瓶。
「……おじ上さまの私室?」
そこで、思い出した。
昨夜、私は左之助に貫かれたまま、総長室に来たのだ。
「すみれさん、お目覚めですか?入りますよ」
山南の声がして、静かに障子が開いた。
「あ、はい」
私は起き上がろうとしたが、何も着ていないことに気づく。慌てて、布団をかぶり直した。
「そのまま、そのまま」
山南は柔和な笑みをこちらに向けた。
「すみれさんの裸体はじっくり鑑賞しましたから。歳三くんたちに愛されてるだけあって、実に美しい」
私の乳白色の頬が真っ赤になる。
その私の前に、山南は数枚の写真を並べた。
(これは……!)
私は顔面蒼白になった。
私の大股開きを大写しにしたものだった。局部を近距離で撮影したもの。乳房を強調するように赤い縄で縛られたもの。
私が眠っている間に、撮影したものだろう。
茫然自失している私に、山南は軽く笑った。
「これを芹沢鴨に進呈します。新見錦と平山五郎を失った今、芹沢は両腕をもがれたも同然。討つなら、今しかありません」
「芹沢を?」 
では、新見錦の粛清は成功したのか。
「芹沢はすみれさんに懸想していました。これを贈呈するということで、島原に招きます。そこで、酔い潰れさせて、斬る!」
いつになく、山南は声を荒げた。
「あと少しです。あと少しで、新選組が真の新選組になります」
私は固くなってうなずいた。邪魔者を始末して、隊の引き締めを図るつもりなのだろう。
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