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幼稚園から始まって高校生になったなら。
第2章 保育器から墓場まで
 他の友人知人に言わせると、透と一緒じゃない時の柚希がそこまで喜んだ笑顔を見せることは存外稀だったらしく“おまえ、愛されてんだな”などと冷やかされたこともあった、実際に現場を見たことがなかった透は“まさか”と思ったものの友人たちからの反応は男女問わずおおむね一致しており、真実だと思わざるを得ない。

「お前らがなにかやったんだろう?」

「いいや違うね。あれは恋する乙女の眼差しだな、絶対!!」

「間違いないね!!」

「・・・へ、へえぇぇ~~。そうなんだ」

 こんな会話が小学校二年生に上がったころから現在まで延々と繰り返されて来た訳であるが、考えてみればまだ子供の時分にも関わらず恋だの愛だのと言う話題が飛び出してくるあたりに情報化社会の波が押し寄せて来ているのを感じずにはいられない。

 もっともそれに加えてもう一つ、彼らが恐ろしいほどにませまくっていた原因と言うのがあった、それが兄弟姉妹の存在だ。

 特に中高生の兄や姉がいる子ほどその傾向は顕著だったがその友人達にも透にもちょうど中高生の兄弟がいた、柚希との色恋沙汰が取り沙汰されて来た小学校二年生当時、長男の和樹は地元の進学校である県立橋本高校に通う三年生であり次男の勝は今年で中学二年生と、見事に小中高に分かれて配置されていたのだ(ちなみに和樹にも勝にも彼女あり)。

 だけど透の場合はそれだけではなかった、この時の透と柚希の関係性は友人たちの想像をはるかに超えて進捗していた。

 家族ぐるみで仲が良かった彼らの家庭ではどちらかの親が遅くなる場合、子供をもう一方で預かってもらうことも珍しくはなかった、特に両親がそろって大学病院の医師として勤務していた柚希の家では急患等の対応で帰宅が出来ないことも多く、そうなると自然透の実家である一条の家でお泊りをすることになった。
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