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崩口川(くえくちがわ)
第1章 崩口川(くえくちがわ)


さて、奈美とお見合いをしたのりひこは、奈美にプロポーズはしたが、奈美からの返事がないことにいらだちをつのらせていたので、想うように仕事ができずに苦しんでいた。

奈美は…

もしかしたらオレ以外の男を好きになったか、幼なじみのカレのことが忘れられないので…

オレと結婚したくないと思っているに違いない…

のりひこが奈美にプロポーズをした日は、10月7日頃だったと思う。

その時、奈美は耳にイヤホンをつけてスマホの音楽を聴いていたのでのりひこの声が聞こえていなかった。

10月中の週末にのりひこは奈美とデートをしてプロポーズをしていたのに、奈美はスマホの音楽を聴いているか他のことに夢中になっていたことがつづいていたので、のりひこは『ヤーメタ』と言うて投げてしまった。

11月2日頃のことであった。

のりひこの職場の上司の奥さまが、のりひこに面会するために家に来ていた。

この時のりひこは、奥さまに『奈美がプロポーズの言葉を聞いていなかったので、プロポーズの返事をもらえなかった!!』と言うて、奈美と結婚することをやめると言うて怒っていた。

上司の奥さまは、のりひこの言葉に対してやさしい声で『奈美さんは、その時スマホの音楽に夢中になっていただけだから、のりひこさんの声が聞こえていなかっただけよ。』と言うて、次の休みに会った時にもう一度プロポーズをしてみたらと提案した。

そしたらのりひこはチッと舌打ちして『はぐいたらしいんだよ…』とめんどくさい声で言うてから、上司の奥さまに結婚をやめる理由を説明した。

「オレ…奈美以外の女と…ヤクソクしてんだよ…女の胎内(なか)に、オレの赤ちゃんがいる…向こうの家にそのように伝えろよ!!ほなそう言うことで…」

のりひこは上司の奥さまにツバをはいた後、背中を向けて応接間から出て行った。
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