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オレンジ色の世界で。
第1章 台風がくる。
「それで、途中で雨がっぱ着て自転車押して帰って来たんだ?はい、タオル」
「あ、ありがとー。うん、押して帰って来たよ。何度か転びそうになるし、車に轢かれそうになるし、本当に大変だった。たかしくんは、学校から何時帰って来たの?」
「ん?今日は午前中に終わったよ」
「え、あれ、じゃぁ?給食は?もしかしてお昼食べて無い、とかー?」
「あ、うん、食べて無い。ついさっきまで昼寝してたし」
母は会話をしつつ、雨がっぱを脱いでいた。そして半袖の白いブラウスに、薄い青色のひらひらとした膝上丈のスカート姿となった。
「え、ちょっと母さん?この大風の日にそんな格好で?」
「ん?ああ、これ喫茶店のさ、今のシーズンの制服なの。着替えるの面倒臭いからそのまま帰って来ちゃった。って言うか、家からこれ着て喫茶店行ったし。可愛いから、私服みたいでしょう?常連のお客さんに似合ってるって褒められるし。母さんもまだ捨てたもんじゃないって事ね」
なるほど喫茶店の制服か。通りでそんな格好してるの見た事無いと思ったワケだ。
いや、それにしても、そんなひらひらのスカートなら捲れてパンツ丸見えるのも道理。
「――ねえ、たかしくん?」
「へ?あ、はい、なに?」
「お腹減ってるよね?」
「うん、まぁ、ぼちぼち、ね」
「今すぐ何か食べたい感じ?それとも、少し我慢出来るかな?」
「我慢出来るけど?」
「あ、そしたらさ、母さん、ちょっと先にシャワー浴びて来るよ。服も着替えたいし。ご飯できたら呼んであげるから、部屋で待ってて――」
そう言うと、母はバスタオル片手にバタバタと風呂場へと行ってしまった。
ぼくは、まるで母の抜け殻の様に脱ぎ捨てられた水色の雨がっぱを拾い上げ、ハンガーに掛けてから自室へと戻った。
ベッドに腰掛け、ふと思い耽る。
テレビドラマに出て来る様なおっちょこちょいキャラの母が、浮気とか不倫とか有り得ないよなぁ、と笑みが零れた。
それから、暫く母から声が掛かるまで、ぼくは音楽を聴きつつ、まったりと時を過ごした。
「あ、ありがとー。うん、押して帰って来たよ。何度か転びそうになるし、車に轢かれそうになるし、本当に大変だった。たかしくんは、学校から何時帰って来たの?」
「ん?今日は午前中に終わったよ」
「え、あれ、じゃぁ?給食は?もしかしてお昼食べて無い、とかー?」
「あ、うん、食べて無い。ついさっきまで昼寝してたし」
母は会話をしつつ、雨がっぱを脱いでいた。そして半袖の白いブラウスに、薄い青色のひらひらとした膝上丈のスカート姿となった。
「え、ちょっと母さん?この大風の日にそんな格好で?」
「ん?ああ、これ喫茶店のさ、今のシーズンの制服なの。着替えるの面倒臭いからそのまま帰って来ちゃった。って言うか、家からこれ着て喫茶店行ったし。可愛いから、私服みたいでしょう?常連のお客さんに似合ってるって褒められるし。母さんもまだ捨てたもんじゃないって事ね」
なるほど喫茶店の制服か。通りでそんな格好してるの見た事無いと思ったワケだ。
いや、それにしても、そんなひらひらのスカートなら捲れてパンツ丸見えるのも道理。
「――ねえ、たかしくん?」
「へ?あ、はい、なに?」
「お腹減ってるよね?」
「うん、まぁ、ぼちぼち、ね」
「今すぐ何か食べたい感じ?それとも、少し我慢出来るかな?」
「我慢出来るけど?」
「あ、そしたらさ、母さん、ちょっと先にシャワー浴びて来るよ。服も着替えたいし。ご飯できたら呼んであげるから、部屋で待ってて――」
そう言うと、母はバスタオル片手にバタバタと風呂場へと行ってしまった。
ぼくは、まるで母の抜け殻の様に脱ぎ捨てられた水色の雨がっぱを拾い上げ、ハンガーに掛けてから自室へと戻った。
ベッドに腰掛け、ふと思い耽る。
テレビドラマに出て来る様なおっちょこちょいキャラの母が、浮気とか不倫とか有り得ないよなぁ、と笑みが零れた。
それから、暫く母から声が掛かるまで、ぼくは音楽を聴きつつ、まったりと時を過ごした。