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ペリドット
第2章 ふたりの少女。
 気分は最高潮に憂鬱だった。
 玄関に踏み入れ廊下に投げ出したかったが、またぶうぶう文句を言われるかと思うと、辟易としてしまい已むなくソファまで運んでやる事にした。
「へえ、ケイゴのくせに意外とキレイにしてるやんか。もっとゴミ屋敷みたいなん想像しとったけど」
 部屋に入ると、安心したのか僕にたいする邪険な空気が少し弱まった感じがした。
 玄関に置いてきたバッグを持って来てやると、素直にありがとーと述べてくるので、何だか調子が狂ってしまう。
 お気に入りのソファは陣取られているので、僕は床の上に座る事にした。
 実際、本当に疲れ果てているのだ。
 
 酔いと先程の激情が、完全に止めを刺してくれた。
 ユミは落ち着かない感じで辺りをキョロキョロと見渡している。
 こうして見ると、随分と大きくなったものだ。
 三年前は確かまだ小学生だった様な気がする。
「もうそろそろ高校受験だっけ?」
「え?ウチ?うん、そーやで。受験生やから勉強ばっかりやわ」
「勉強が嫌になって逃げ出して来たとか?」
「はあ?ウチがそんなダサイ事する訳無いやん。彼氏に逢いに来たんよ、あ、もう元カレか」
 ユミは隠し立てする事無くそう告げてきた。
 そうか、彼氏いや、元カレ?なのか。
 僕に取ってはいけ好かないガキだが、コイツももう中学三年生なのだから色恋の一つや二つはあるのだろう。

「彼氏に会いに来たけど、今はもう元カレになってしまったってこと?」
「うん、まぁそーゆー感じやね。サプライズでいきなり遊びに来たんやけど、なんかもうコッチで彼女出来とったみたいで。今年の春に神戸から東京に引越しちゃったんよ。それで夏休みになったら逢いに来るって言っといたんやけど……」
「なるほど、そう言う事か。その今の彼女と一緒にいる所にバッタリ出食わしちゃった訳か」
「うん、バッタリ。問答無用でビンタしたら泣きそうな顔しとったし。ホンマにあんなヘボい男になんで惚れとったのか、よく分からんし。セックスせんかったのがせめてもの救いやわ」
 思わず口を閉ざしてしまった。
 そうか、そう言うサプライズ旅行だったのか。
 と言う事はコイツはコイツなりに覚悟を決めて東京に来たんだろう。
 正直、好きでは無いが、幼い頃から見て来ただけに感慨深い感情が少しは湧き出してきた。
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