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カゴノトリ
第1章 部屋の前
「あっ……いやっ……やめっ……はっ……だめっ……」
部屋の中から、若い女のくぐもった声が漏れ聞こえてくる。
高い女の声だった。
大人の声には聞こえない。
「だめっ……やめてっ!」
さっきより大きな声だ。
年端のいかない娘の泣きそうな声に聞こえる。
卓也はパジャマ姿で、その声の漏れる部屋のドアの前に、しゃがみこんでいた。
夫婦の寝室だった。
卓也が自分の部屋を出たのは、十一時を過ぎてからだ。
その頃だったら……二人は……もう……。
卓也はそう思ってここへ来た。
新しい父親の沖田剛三からは、書斎とその奥にあるこの寝室には近づくな、と言われていた。
卓也の母親は卓也が幼い頃に亡くなった。
父親は先月亡くなった。
自殺だった。
部屋の中から、若い女のくぐもった声が漏れ聞こえてくる。
高い女の声だった。
大人の声には聞こえない。
「だめっ……やめてっ!」
さっきより大きな声だ。
年端のいかない娘の泣きそうな声に聞こえる。
卓也はパジャマ姿で、その声の漏れる部屋のドアの前に、しゃがみこんでいた。
夫婦の寝室だった。
卓也が自分の部屋を出たのは、十一時を過ぎてからだ。
その頃だったら……二人は……もう……。
卓也はそう思ってここへ来た。
新しい父親の沖田剛三からは、書斎とその奥にあるこの寝室には近づくな、と言われていた。
卓也の母親は卓也が幼い頃に亡くなった。
父親は先月亡くなった。
自殺だった。