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スカーレット オーク
第36章 36 露天風呂
 やっと湯船につかり、手足を伸ばして伸びをしていると、「ああ。言わなかったっけ。あの眼鏡は伊達だよ。一応紫外線除けにはなってるけど」と、直樹が言い始めた。

「ええっ?」

 緋紗は今までで一番びっくりしたかも知れない。

「僕は視力はいい方で一、五はあるんだ。仕事で木片やら砂やら飛んできてさ、結構目が危ないんだけど、ゴーグルはちょっとうざいし。眼鏡は便利だね。もうずっと掛けっぱなしになったよ。」

 緋紗は直樹の話を半分以上聞いていなかった。――見えてないと思ってた……。
 恥ずかしさと驚きでしばらく口がきけなくなっている緋紗に、「どうかした?」と直樹はマイペースに聞いた。

「そうでしたか……」
「おいで」

 直樹はそんな緋紗を無視して腰を抱き自分のほうへ引き寄せ、軽くキスをする。

「この温泉はあんまり効能がないらしくてね。ただのお湯らしい。何かに効けば温泉地で有名になったかもしれないね」

 直樹の腕の中で緋紗はもやもやしていたが、湯の温かさを堪能した。

「そろそろ日が陰ってきたかな。上がろう」

 直樹が脱衣所まで誘導してくれた。

「じゃまたあとでね」
「はい」

 火照った緋紗は冷えないうちに素早く身体を拭き着替えた。
そして、「よく見えるんだ……」と、つぶやいた。
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