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異常行動が日常行動のオンナ【完結】
第5章 テンションショック
その1



腰を折り両膝で両手を支えて肩で荒い息を整える…。
その体はまさに、ゴール直後の陸上ランナーさながらである。


全力疾走…。
己のその時点での完全燃焼…。
通常の人であるならばささやかでも充実感を享受する。
マトモな人間なら…。


だが…、生憎なことに郡氷子にとって、そこへ到達する感性はおぞましいほど無意味な倒錯へ誘惑にほかならなかった。


彼女流にこれを端的に言葉で表せば、”クソな自分”だった。
そんな自分はこの自分には存在しない。
そんなもん、許せない…。


許容は罪悪だから。
彼女の到達点は明瞭であった。


***


「おらー、いつまでへばってるんだ、テメー!まずは起き上がって私の前でシャキッと立てって!」


”ボコッ!ボコッ!バシーン…!”


氷子は高速具で自由を奪われ、すっぽんぽんに剥がれて横ばいになっている若い男を蹴りまくり踏みつけまくったあげく、その茶色い染まった髪の毛を鷲掴みにすると、膝打ちを横っぱらにめり込ませながらひっ立てた。さらに、自動的に開脚を余儀なくされてる股間へ思いっきりキックを放った。


「ううっ…」


手錠と自らの両手が寄り添うように、激痛を浴びた股間へ吸い寄せられるように引っついていった。
もう氷子のテンションはメーターアップして、手のつけようがなかった…。


***


「ベッドで待ってろ!」


ついにキレ狂った最狂女はゴミでも放るかのように、ヨシキを両手での髪の毛投げでベッドに放り捨てた。


「はあ、はあ、はあ…。ヨシキ!さっさと天井向いて、チンポおっ起てろ!私が裸になる前にボッキ不完全なら、即ちょん切る!」


ここでついに20才そこそこの青年はパニックを起こした。


「わー!やだー!オレはもう帰るー!!」


”コノヤロー!!この期に及んでダダこねやがって!場合によっちゃあ、このモヤシ男からぶっ殺す!”


「テメー!萎えてんじゃねーよ!」


誠に素早く服を全部脱いで自らも生まれたまんまの姿になった氷子は、瞬間移動のごとく、アタッシュケースに潜ませたあった包丁を握って、気が付くと拘束男に馬乗りとなっていた。



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