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大魔王の子を孕みます
第10章 新月
人の村があるってライズが言ってた。
その村に行けば俺だってなんとかなるさ。
そこからデュセリオンなり、リアルなりに帰る方法を探してやる。
ライズとは二度と会わずにおさらばだ。
裏庭に逆らうように歩き出した俺の襟首をメフィストが掴む。
「薔薇園はあちらでございます。」
「離せっ!俺はこの屋敷を出て行く!」
「それはなりませぬ。シロ様がメイドである以上はライズ様のお言い付けを守って頂きます。」
俺の腰を抱え荷物のように抱えたメフィストがあっさりと俺を屋敷から運び出す。
「離せっ!変態エロジジイっ!」
そう叫んだ瞬間、薔薇園のど真ん中で俺の身体が降ろされる。
この薔薇園は迷路になるように造られてる。
屋敷の廊下の窓から見下ろした時、巨大迷路が見えてた。
しかも、その迷路はラビリンス(迷宮)仕様になってるとミルが言う。
じっと見てると迷路の壁になる薔薇の木が移動して迷路の形が変わってく卑怯な迷路だと思った。
そんな薔薇園の真ん中で降ろされても俺じゃ逃げようがないと悟るのに5秒も必要ない。
無言のままメフィストが木の皮で編まれた籠に薔薇の花を摘む作業を始めてる。
俺は不貞腐れて座ってるだけのメイドだ。
「あの…、エリスって女がライズの妻なのか?」
沈黙が怖くて泣きそうになる。
だからメフィストに話し掛ける。
「左様です。」
メフィストの冷たい言葉に胸が痛くなる。
「だったら、なんでライズは俺を孕ませようとするんだよ。嫁さんが居るなら嫁さんに子供を作って貰えばいいじゃん。」
「ライズ様に嫁さんはおりませぬ。」
「妻ってエリスが居るだろ?」
「エリス様は妻を名乗る事を許されてるだけです。」
「はあ?」
どうやら魔族の仕組みを俺はまだわかってないらしい。