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大魔王の子を孕みます
第12章 人の村
肉と野菜が詰められたパン…。
壺に入ったシチュー…。
揚げた小魚に溶けたチーズが掛けられた料理…。
串焼きにされた肉料理…。
デザートのアイスやケーキもふんだんにある。
「ライズっ!あれ買ってっ!」
「こっちも欲しい♡」
そうやって片っ端しから俺が強請れば
「メフィスト…、面倒だから全部買って来い。」
と言ってライズが適当なテーブルを店から借りて腰掛ける。
テーブルには俺とライズとミルにグラスが出され赤い液体がガラスの壺から注がれる。
「んまーっ!何これ?」
口の中で爽やかに広がる甘酸っぱい飲み物だが、後味はなく何杯でも飲めそうな気がする。
「シロ様…、これ、野苺のジュースです。籠いっぱいの野苺からコップ1杯分しか取れない凄く貴重な飲み物なのです。」
ミルがエッヘンと小さな胸を張り知識をひけらかす。
野苺は太陽の光が届く範囲の森でしか取れない為に希少扱いになっており、新月の祝いの時にしか味わえないらしい。
「ミルはこの村の事を知ってんのか?」
「ミルも母様が生きてる時はこの村で育ちましたから…。人間だった母様が亡くなったので父様と亜人村に移ったのです。」
やはり人と魔族では寿命が違うと言われると、せっかくのお祭り気分なのに凹んで来る。
俺はいつまでライズと…。
そんな事を考える俺の手をライズが握る。
「もっと飲むか?」
優しいだけのライズが居る。
テーブルにはメフィストが買って来た食べきれないほどの料理が並んでる。
幸せだと思う。
この幸せが永遠に続いて欲しいと俺は願う。
「うんっ!」
お代わりするつもりでライズにグラスを差し出したのに…。
俺の首を掴んだライズが俺の口に唇を重ねて来る。
「んぐっ!?」
大通りの人達が俺とライズを見てる。
ライズは俺の口に野苺のジュースを流し込んで来る。
それは、とても甘酸っぱくフルーティーな味なのに俺の胸が熱くなって、どこかほろ苦い気分にさせられた。