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大魔王の子を孕みます
第13章 女神
「よお、色男のお兄ちゃん、見せ付けてるね。」
くぐもったガラの悪い声がする。
ご機嫌で食事をしてたミルが青ざめて固まってる。
何事にも動じないライズは平然としてる。
俺は俺でため息を吐く。
幾ら魔族に羞恥心が無いとはいえ、ここは人の村で住民の殆どが人間なのだからTPOを考えずに女とイチャつけばチンピラ風情の連中が絡んで来てもおかしくない。
そんな連中にせっかくのお祭り気分を壊されるとか迷惑だと、声の主に視線を向けて俺はミルと同じように固まった。
全身の血が引くような気がする。
背中に冷たいものが流れ落ちる。
声の主…。
長い口…。
鋭い牙…。
毛むくじゃらの手には長く鋭い爪が光る。
「人狼…。」
あの森の悪夢が脳裏に蘇る。
震えるミルをメフィストが抱きかかえる。
あの森の人狼ではない。
あの時の人狼は深い蒼色の毛並みをしてた。
この人狼の毛並みはライズの髪と同じ漆黒の色をしてる。
それでも、あの森の人狼と同じ金色の目が俺を見下ろしてるだけで俺も身体中が震え出す。
「下世話な事を言うな。ジン…、シロが怯えてる。」
ライズが人狼を見ずに窘める。
「悪い、悪い…。怖がらせるつもりはなかったけど…、お前さんが俺の出した迎えを断ったりするからだ。」
人狼は豪快に笑い俺達が居るテーブルに座って来る。
ジンの出迎え断ったとはどういう意味だ?
「ライズ…。」
「大丈夫だ。あの森の人狼の兄ではあるが、この村ではジンが警備兵のトップだ。」
「魔族が人間の村を守ってるって…、それって闇夜の時とかやばくないのか!?」
亜人の森での経験を考えれば、闇夜で理性を失くす人狼は亜人や人間を貪り食うイメージしか湧いて来ない。