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大魔王の子を孕みます
第14章 勇者
「なあ、勇者のオッサン…。あんたの間違いを教えてやる。」
ひたすら勇者の剣を受け流し、勇者に向かって説教する。
「悪魔の戯れ言を聞く気はないっ!」
「俺、悪魔じゃないよ。普通の人間の女だよ。あんたはそこが間違ってる。あんたがやろうとしてる事は神の名を語った殺人だ。」
「黙れっ!」
「黙らない。5千年前、あんたと同じ馬鹿な間違いをした剣士が自分は勇者だと勘違いしてか弱い女性を殺した。その結果が今の状況だ。太陽は限られた範囲にしかなく、人々は壁の中に閉じ込められている。」
「それも全て悪魔の仕業だ。」
「違うっ!あんたみたいなのが、無闇に人殺しをしたからだ。原因は全て人間にある。その責任の全てを悪魔のせいにするな。」
デュセリオン1の剣士の名は伊達じゃない。
イベントである対人戦では、この5年、ずっと俺が優勝してた。
VRであっても俺の身体が剣の使い方を覚えてる。
オタクのシロは体力が無いが、今の俺はライズの魔力で寿命が伸びた分、体力だけは化け物並だ。
対する勇者の方は剣を振り回すだけでフラフラになってる。
実戦経験が違い過ぎる。
「勇者のオッサン…、あんた、本当は虫すら殺せない人だろ?」
俺の言葉に息切れをしてる勇者の動きが鈍くなる。
VRでも俺は様々な魔族を倒してた。
この世界に居た勇者は壁の中に引き篭もり、いつか大魔王を倒すのだと夢を見てただけの、ただの人間だ。
「わかってんだろ?オッサンの腕前じゃ、人間の女である俺すら倒せない。ましてや大魔王が相手なら瞬殺されて終わっちまう。」
それでも神を信じる勇者は健気に剣を奮う。
この世界に神々はもう居ない。
「諦めろ…。」
俺は勇者にトドメを刺す。
俺のレイピアの切っ先が勇者の首にほんの僅かだけ突き刺さる。
神の剣を手放し息切れをしながら俺の前にガックリと項垂れるただのオッサンが哀れだと思うだけだった。