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大魔王の子を孕みます
第1章 デュセリオン
広大なデュセリオンは未だにコンプリートされていない。
設定が大魔王ライズからのが侵略を防ぎ、ライズを倒すストーリーになってるというのに…。
毎日のように発生するイベントが多過ぎて攻略にまで手が回らないのが現状だったりする。
「…という訳でギルド結成10年を記念して大魔王討伐に本気で挑戦してみようと思う。」
月に一度のギルド会議で、そう提案してみる。
攻略組、最大ギルドだった我がギルドは近年、結婚やら出産に伴うリアル事情で弱体化が始まってる。
思えば10年前は俺だって学生だった。
気の合う連中を集めて何時間もログインして未攻略のクエストを最速クリアするなどの偉業を打ち立てたりもした。
その限界が見えて来た10年という節目に俺は大魔王討伐を記念としてやりたいと願う。
この討伐が終われば…。
勝っても負けてもギルドを解散しようと思う。
最盛期に200人も居たギルドメンバーも最近じゃ20人程度しか見かけない。
「うん、いいよ。10年だもんね。」
うちのギルドで最強課金者、最強魔道士の名を欲しいままにしたアミルさんが答えてくれる。
アバターの見た目は可愛らしい少女だが、実は中身が50のオッサンでかなりの大企業の社長という噂の人だ。
他には回復役、ビショップの千夏(ちか)さんやガーディアンのシエルさんなどが同意する。
今回の討伐に同意してくれたメンバーのほとんどがギルド創立からの旧い人ばかり…。
誰もが攻略組を引退してデュセリオンは暇つぶしゲームにしておこうと考えてる。
多分、俺だけが未だに本気で攻略組をやろうとしてる。
だったら新しい初心者ユーザーを集めて俺が知る限りの知識を共有する攻略組を再結成する方が良い時期だと思う。