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大魔王の子を孕みます
第1章 デュセリオン



「まあ、大魔王討伐は無理だとしても、未だ誰も到達記録が無い大魔王城まで辿り着ければ、それなりに価値はあるかも?」


前向きな千夏さんが笑いながら言う。

新しいエリアマップに初めて踏み込んだパーティーはしばらくの間ではあるがスレイブ中央広場の掲示板に名前とエリアが公表される仕組みだ。

そうやって、俺のギルドはやたらと有名になった。

その頃の栄光が再び味わえるのなら御の字だと皆が笑う。

俺だけが笑えない。

俺だけが心の何処かで大魔王討伐を夢見てる。


「プロテクトをかけてMP回復したら行こうか。」


アミルさんがパーティーの全員に一番強いプロテクト魔法をかけてくれる。

このプロテクトを使えば巨大なオーガモンスターなどには効かないが小型のゴブリンや植物系イーター程度なら戦闘せずに進めるようになる。

こんな場所で無駄な時間を使いたくないと誰もが最小限戦闘で大森林を駆け抜ける。

久しぶりのパーティー戦闘に俺はワクワクする。

リアルじゃ人付き合いの悪い俺がリーダーとして先陣を切り、それなりに活躍出来る瞬間だ。


「6時間…。」


ゲラゲラとシエルさんが笑う。

マップ頼りだったにしろ少数精鋭という事実が功を奏し、前回の3分の1のタイムで大森林を抜け切った。


「ここ、セーブポイントあるね。」


アミルさんが嬉しそうに叫ぶ。


「じゃ、今のうちに風呂とか飯を済まそうぜ。」


シエルさんの言葉に誰もが同意する。

大森林を抜けた先は巨大な岩壁がそそり立ち、その壁の谷間の様な渓谷が1本道で伸びている。


「俺、少しだけ様子を見とくよ。」


ログアウトする皆んなにそう声を掛ける。

俺だけが早く大魔王城に行きたくてウズウズしてる。


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