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大魔王の子を孕みます
第1章 デュセリオン
この渓谷だって、抜けるのに何時間かかるかわからない。
もしかすると大魔王の前に危険なモンスターが配置されてる可能性だってある。
下見くらいはしておきたい。
心が逸る俺にアミルさんが
「無理はしないように…。」
と警告しながらもプロテクトの掛け直しをしてくれる。
俺がモンスターに倒されてゲームオーバーになれば俺だけがスレイブの街に戻される。
デュセリオンには死ぬという行為はないが、モンスターに倒された場合のペナルティーがある。
所持金の半分が没収され、レベルが多少下げられる。
しかも俺がスレイブに戻されれば、俺は単独で大森林を抜けなければパーティーに戻れない。
「危なそうならすぐに戻ります。」
俺がそう答えればアミルさんがログアウトする。
セーブポイントでセーブをして、大魔王城に向かってると思われる渓谷に降りていく。
思ってたよりも暗い谷底…。
いつモンスターが出るかと緊張するくらいならば光魔法を使いたいが無駄なMPを使いたくないという心理が邪魔をする。
リアルなら目が慣れる程度の薄暗闇だというのにヴァーチャルだから、そんな風に目は慣れる事なく恐怖に耐える為に剣の柄を握ったまま慎重に進む。
10分くらい歩いたと思う。
気持ちがピリピリし過ぎて時間の感覚を失くしてる。
「出口だ…。」
暗い道の先に僅かな広がりを感じる。
どうやら、この谷底にモンスターは居ない。
大魔王城に向かうパーティー人数が多い場合の安全エリア的な道として設定されてるのかもしれない。
この渓谷を抜ければ大魔王城…。
俺はそこに辿り着いた初めての人間になれる。
その気持ちが俺の足を早め、皆んなのところへ引き返すという選択肢を葬り去る。
この選択肢が失敗だったかもしれない。
渓谷を抜ける事で俺は人生最大の不幸な運命の渦に巻き込まれ、最悪の形で大魔王討伐に挑む羽目になっていた。