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大魔王の子を孕みます
第9章 闇夜
苦しくて…。
悔しくて…。
そして切なくて…。
ライズが俺の顔を見て目を開く。
「泣くほど嫌か?」
狼狽えた声がする。
俺が流す涙にライズが指先で触れる。
ずっと俺が泣くから…。
ライズは俺から離れようとしてたと、馬鹿な俺はやっと気付く。
愛がわからない魔族は俺が泣く理由すらわからない。
人はわからないとウザいとか面倒だとか思う。
魔族はわからないと狼狽えて怯える。
その怯えを見せる事が許されないのが大魔王という孤独な存在…。
ライズの手を取り、その平に口付けする。
「愛してる…、人は我儘で嘘吐きだから…、愛してる人には愛されたいと貪欲になる。」
俺の言葉がライズに伝わるかわからない。
それでも伝えなければ俺はずっと泣くだけの嫌な女になりそうで怖かった。
「魔族に愛はわからない。」
ライズが苦痛で顔を歪める。
「知ってる。それでも俺はライズに愛されたい。自分勝手な俺がライズを愛してるから…、愛されたいと願っちまう。」
「シロ?」
「闇夜なんか来なければいいのに…。」
そうすれば俺はずっとライズの傍で我儘なだけのメイドでいられるのに…。
「闇夜が終わればすぐに戻る…。」
ライズが笑う。
嘘の無い約束…。
「俺の身体がライズを忘れる前に戻って来なければ浮気するからな。」
「だから…、浮気とはなんだ?」
「他の男の子を孕んでやるって意味だ。」
「それは困る。」
「だったら、もう意地悪しないで…。」
俺は勝ち誇って悪魔に笑顔を向ける。
悪魔が不機嫌な表情をする。
「シロは人間のくせに悪魔のような事を言う。」
膨れっ面になる悪魔が可愛くて愛おしいと思う。