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魔王様の寵愛
第1章 魔王様の御迎え。

外国人は何かを考えるようだった。
俯き加減で私から視線を逸らし、ゆっくりと瞬きをした後で口を開いた。
「···。あれは確か、私達が幼かった時の事」
ちょっとちょっと待て。
そのセリフは某鬼退治の誰かさんが言っていたセリフにそっくりじゃないですか。何だったら私もあの子のセリフを言っていいかな?正直とっても面倒臭い。今なら彼女の気持ちがよくわかる。
「あの。何かお困りのようでしたら警察を呼びますので、警察署の方にてあなたのガールフレンドを捜して上げてください。何度も言うように、私はあなたを知りません」
彼の話をぶった切って、キッパリ言ってやった。
すると、彼は深いため息をついて、額に眉を寄せて憂いた表情を浮かべていた。言い過ぎてしまっただろうか。けれど、知らないものは知らないのだ。彼には諦めて貰いたい。だって、私は、彼の捜している人物ではないのだから、と··、この時の私は小さかった時の記憶など、きれいさっぱり忘れていたのだ。
「本来ならば、君をこんなふうに無理矢理攫うような真似はしたくはないのだけれど···」
私はスマホを探して、バックの中を漁っていた為か、彼から注意を逸らしていた。近づく彼の気配にハッ、と気付いた時にはもう遅く。目の前に伸ばされた指先がコツンと軽く私の額に当てられると、一瞬のうちに物凄い眠気に襲われた。何がどうなったのかさっぱりわからず、抗うにも抗えず、体の力が抜けて行く。
そのせいかフラフラして足元がおぼつかない。
頭がふわふわして、体が言う事をきかない。
「!?···ッ、な、··にを···!」
意識を保とうとするけれど···。
「···」
倒れそうになった私の体が、彼の腕に抱き止められる。
遠のく意識の中で、体がふわりと浮かんだ感覚を最後に、私の意識は暗転した。

