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片時雨を抱きしめて
第3章 第三章 記憶
私たちは受験生となり、私のような予備校や塾に通わない生徒は、警備の先生に追い出されるまで教室や図書館に居残った。

なんとか同じクラスになれた芽衣だけど、彼女は家庭教師が待っている家にそそくさと帰り、夜遅くまで勉強を強いられた次の日には、学校を休むこともたびたびあった。

日が暮れてしばらくしてから家に帰る私だけれど、先生の帰りはそれよりももっと遅かった。私たちがみえない場所で、先生たちはいったいなにをおそくまでしているんだろうか。

何度か帰りの遅さを問い詰めたことはあったけれど、先生はお前らがおもっているより大変なんだよと力なく笑ったっきり、詳しく教えてはくれなかった。

私たちは連絡先を交換していなかったから、良くすれ違った。
私はいつも先に帰った時は、先生のご飯をつくって待っていたけれど、先生は晩御飯を済ませて帰ってくる日が多くあった。
私はそのたびに少しだけ腹を立て、先生に嫌味のひとつやふたつを言うのだけど、先生は私の作ったご飯を丁寧に保存容器に入れ、次の日に必ず食べてくれる。

誰かと生活と共にすることの温かさを、私は生まれてこの方初めて知った。
そのすれ違いすら楽しく、小さな気遣いが愛おしく、私はこの生活が、心底好きだった。

受験勉強は日に日に私の精神をむしばんでいく。第一志望に受かる以外、私が母親と離れる方法はなかったから、そのプレッシャーがシャーペンを握る手に降りかかる。

月に一回母親と連絡を取る約束は、きちんと履行した。四月の末にかけた電話の中で母は私の居場所について気にしているようだったが、私はあいまいに答えた。
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