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片時雨を抱きしめて
第3章 第三章 記憶
「綿谷、わかってるとおもうけど」
先生が箸をおいて、テーブルの向かい側にすわる私の方をみる。
「これはあくまで一時的な処置で、ちゃんとどうするか考えよう」
「わかってる」
「わかってるっていったって、」
「先生が教えてくれた奨学金あるでしょ、」

私が予想外の言葉を口にしたからか、先生が反論のためにひらいたであろう口を閉じた。
「奨学金。あれ使って東京の大学行く。そしたら下宿費用も安く借りられる」
何か言葉を探す先生をさえぎって、言う。
「だから、一年間。三年生の期間だけ、住まわせてほしい。
だれにもいわない。
絶対。家事は全部する。先生の言うことは絶対に聞く。
勉強も頑張る。絶対国公立行く、
だから」
お願い。

私はずっと言おうとおもっていたことを口にした。拒絶の準備はできていたし、それに対する反論も用意していた。
なのに、

「わかった、いいよ」

先生は二つ返事で、私を受け入れてしまった。

先生はそのあと私に何も声をかけず、そのまま食べ終わった弁当を片付ける。白ご飯の横にそえられた紅ショウガだけは手がつけられずそのままで、またひとつ、先生について詳しくなった。


私と先生はその日の夜、三つの約束を交わした。
ひとつ、期間は一年間。高校を卒業したら家を出る。
ふたつ、月に一度は母親と連絡を取る。
みっつ、絶対にバレないようにする。

こうして、私たちの同居生活が始まった。


それからの毎日は、あまりにも平穏だった。
短い春休みを二人で穏やかに過ごせば、(もっとも先生はほとんど毎日学校に行く必要があって、私はこの部屋でひとりで過ごした)あっという間に新学期がやってきた。

先生はとなりのクラスの担任となり、私と先生が学校で顔を合わすのは現代文の時間だけになった。
ごくまれに事務的にかわされる会話に、私は一喜一憂したり、少しだけ優越感をあじわってみたりしたけれど、先生は学校にいる私を特別扱いしたことは一度もなかった。
周りの生徒とおなじように大切に扱い、周りの生徒と同じように笑い掛けた。

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