この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
片時雨を抱きしめて
第1章 第一章 自覚
「雪乃! 青木となんかあったの? 最近例の呼び出し、ないじゃん」
昼休み、芽衣がにかっと笑った。黒染めの取れかかった茶色い髪が揺れる。
短すぎるスカートにちらちらとのぞくピアス。生徒指導の常連。そんな芽衣は友達の少ない私の唯一の友達で、私の顔色の変化にすぐに気づく。
「んーなんもないよ? いやあ、だるくて。テキトーに理由つけて逃げてるんよ」
えー青木かわいそう、芽衣がまたけたけたと笑って私のとなりを歩いた。
「ね、雪乃、結局進路希望なんて書くの?」
芽衣が私のカーディガンの裾をつかんで不安そうに問うた。
「んーお嫁さんかなあ、目指せ玉の輿!」
私が芽衣のほうを向いておどけて笑うと、芽衣も少しだけわらった。
芽衣は、なんて書いたんだろう。
ただただ明るくて不真面目な芽衣も、ここを出たら何者かになるのだろうか。
私は何もきけないで、購買で安いパンを買った。
ママと、話そう。
パンを選ぶ芽衣の綺麗な横顔を見ながら、そう思った。