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遠き記憶を染める色【完結】
第26章 焦点の女、帰国す
焦点の女、帰国す



この日、日本に帰国した永島弓子が空港ロビーに姿を現すと、待ち受けていた報道陣が一斉に押し寄せ、焦点の女性はマイク攻撃でもみくちゃされた。


無論、甲田サダトの突然の死を巡って、年上の交際相手であった自分に世間の耳目が集まっていることは、、国内からも情報を得て事前に承知済であった。
彼女サイドとしては、極力コメントを避け、”嵐が過ぎ去る”のを待つスタンスであったに違いない。


だが、早くも世間の目が甲田サダトの死は永島弓子にフラれたことと無関係ではないと捉えており、風潮的には完全にサダトへの同情心が高まるのと連動し、弓子に対する風あたりが強くなっていたのは明確であった。


なにより、彼女は以前より何かとお騒がせ女優ということで、この時とばかりゴシップネタが蒸し返され、彼女の悪女イメージを一気に押し上げてしまったようだ。
そんな背景から、芸能レポーターは弓子のスキャンダラス面に集中砲火を放つ流れになっていたのだ。


従って、世の関心は自然と甲田サダトの謎の死を受けた永島弓子の挙動にスライドしており、彼女は難しい対応を迫られている事情があった。
そして、もともと向こうっ気が強い弓子は、執拗な報道陣の追及に逆ギレしてしまうのだった…。


***


『永島さん!甲田さんは自殺の線が濃厚で、永島さんとの決別が原因ではないかと囁かれていますが、甲田さんからは復縁を迫られた事実はあったんですか?』


「…」


『永島さん!甲田さんの遺書には変わった性癖に悩んでいたことが記されていたようですが、永島さんはその性癖が原因で甲田さんと別れたのでしょうか?』


「…」


『永島さん!レッツロールのメンバーからは、甲田さんと永島さんの破局は結婚前提の交際が公表されて数か月後だったようだとコメントとしていますが、本当ですか?だとしたら、甲田さんが抱えていた変わった性癖が原因だったんですか?』


「…」


『永島さん!一部報道によると、半年前の甲田さんとの決別発覚前からお笑い芸人の既婚男性と不倫関係が続いていたとのことですが、事実ですか?』


「…」


弓子は無言を押し通していたが、サングラス越しからもその表情はとても険しく見て取れた。


***


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