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異邦人の庭 〜secret garden〜
第13章 ミスオブ沙棗の涙 〜初恋のゆくえ〜
「…ごめんね…紫織…。
…苦しくなかった?」
申し訳なさそうに紫織の髪を撫でながら気遣う様は、もういつもの穏やかな紳士の政彦であった。

…ベッドの中、二人は新婚の夫婦…いや、結ばれたばかりの恋人同士のように仲睦まじく抱き合っていた。
「…大丈夫よ…あなた…」
紫織は政彦の逞しい胸に頰を押し当て、微笑んだ。
…愛された充足感と自信が、紫織を温かく包み込んでいた。
それから…夫の初めて見た雄々しい獣性に、すっかり魅せられてしまったのだ。

「…でも…しばらくは立てないわ…」
軽く睨む振りをする。
腰が立たぬほど、愛されたのは初めてだ。
…結局、性交は四回に及んだからだ。

「…今日が日曜で…テルさんが来ない日で、本当に良かったわ…。
こんなところを見られたら…恥ずかしくて生きていけないわ」
紫織はつくづく思った。
…こんな…寝乱れたベッドで明るい朝陽の中、夫と一糸纏わぬ姿でしどけなく横たわっているなんて…。

政彦が可笑しそうに笑った。
「…こんな君もめちゃくちゃ可愛いけれどね…」
「政彦さんたら…」
白い頰を膨らませる。
そんな紫織が愛おしくて堪らないように、紫織を抱きしめる。
「…今日の朝食は僕が作るよ。
…イングリッシュマフィンにベーコンエッグ、ブラウンソースで煮たキドニービーンズ、エンダイブとラディッシュのサラダ…それから熱々のロイヤルミルクティー…。
ウェストミンスター時代に寮母さんから習った正式なイングリッシュブレックファーストだ」

温かく頼もしい夫の腕を握り返して微笑む。
「…素敵…。美味しそう…。
お腹が空いちゃった…。
早く食べたいわ…」

政彦が起き上がり端正な眼を細め、紫織の艶やかな黒髪を優しく撫でた。
「すぐに作るよ」
…でも…。
はにかむように貌を近づけ、そっと告げた。

「…もう一度、キスをしてからね…」
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