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秒針と時針のように
第2章 顔を見た瞬間からの嫌な予感
 カシャン。
 忍が金網にもたれる。
「拓のお母さんっていつもあんな感じ?」
 名前で呼ばれるのはやっぱ嬉しい。
 オレは首を縦に振った。
「体育でけがした時も誰にやられたのって怒ってさ……」
「そういうのが親ならいなくていいなぁ」
 忍があまりに寂しげに言うからオレはびっくりした。
「そんなことないっ」
「俺のお母さんさ」
 声色が変わる。
「俺捨てて知らないおじさんとこに行っちゃったんだぜ?」
 あれ。
 なにこれ。
 しんぞうがきゅーって。
 痛い。
「お墓って昨日は」
「あれウソ。でも同じだろ」
 違う。
 それは違うよ。
 でも声が出ない。
 忍が座り込む。
 昨日の放課後一緒にバスケをした忍はいない。
 知らない。
 ちょっと喋っただけのオレは知らない。
 でも言いたい。
 言わなきゃ。
 それは違うよ忍って。
 拳を握る。
「忍」
「そうだ、腕大丈夫?」
 ひきょうもの。
 そんなこと言うの。
 言えなくなんじゃん。
「だ……大丈夫かな?」
「あっそう」
 ああ、また。
 ああ、もう。
 使われるとむかつく。
 チャイムが鳴る。
 十分後に朝礼だ。
「どこいくの?」
 校庭とは逆の山の方に向かう忍。
「はじまっちゃうよ?」
「つまんないじゃん、校長先生のお話とか」
「うん、だね。サボりだ」
「そう。サボりだ」
 オレが笑うと忍も笑った。
 だからその背中を付いてくことにした。
 そういえば、朝礼で忍を見たことない。
 フェンスの穴をくぐって山に入る。
 長い草をよけながら登る。
 もう一度チャイムが鳴る。
 みんなの声がする。
 五分後に朝礼だ。
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