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秒針と時針のように
第8章 おまけ

 溢れそうな性欲を抑えて、食器を片付ける。
 今日は油汚れがしつこい料理オンパレードだったからな。
 洗剤をふんだんに使って鍋を綺麗にしていく。
 数分もしない内に忍がコップや小皿を持ってやって来た。
「ん」
「さんきゅ」
「バリ旨かった」
「んひひ」
「やめろって」
 すぐに冷蔵庫を開く。
 オレん家なのを忘れてたのか、小さく舌打ちした。
「なんか食べたいの?」
「生ハム」
「家にあんの?」
「たぶん」
「取ってきたら?」
「面倒」
「冷凍にサラミピザあるよ」
「じゃあ、頂く」
 今日は泊まんのかな。
 頼んでないけど察してくれてる。
 恋人の日。
 なあ。
 そんな日に泊まってくれたらさ、勘違いしてもいいだろ。
 忍。
 電子レンジのタイマーを見ながら、とんとんと踵で時を刻んでる。
 食器なんて放置して抱き締めたい。
「拓」
「あっ、なに?」
 髪を揺らしながら振り向いた忍が意地悪く囁いた。
「俺に見とれて割んなよ?」
 バリン。
「あっ」
「えっ」
 とどめを刺しておきながら、無茶なこと言う。










完。

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