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秒針と時針のように
第4章 認めたくないこと
 模試の終わった冬休み前最後の週末だった。
 あれから拓とはいつもどおり過ごしていた。
 もちろんお互い腹に一物抱えてるって顔して。
 そういやあの余ったパンの行方はどうなったんだかな。
 忘れた。
「委員会の定例会?」
「ああ。六時に西棟の第二会議室だって」
 めんどくせえ。
 同じ委員の志木に相槌を打って帰り支度を済ませる。
 時刻は五時。
 拓の机を見ると、結城が座っていた。
「なにしてんだ、てめえ」
「あっ。彼氏なら母親の見舞いで帰ったよ」
「誰が彼氏だ」
「拓だろ?」
 見舞い。
 そうか。
 快方に向かっていると聞いたが、まだ大変なんだな。
 それにしても……
「俺に一言もなしかよ……」
 不満を吐いた自分に驚く。
 ガシガシと頭を掻いた。
「別に。こんなんで不貞腐れる意味もねえっての」
 舌打ちをしながら教室を出る。

 一時間裏庭で時間を潰し、嫌嫌西棟に向かう。
 生徒の教室や職員室、生徒会室は全て東棟にあり、こっち側には化学室とか特別授業の部屋しかない。
 あとは会議室だが、滅多に使われない。
 だから誰もいない廊下を心底理不尽を感じながら歩いた。
 大体委員会で集会なんてやる意味がわからない。
 二年になって半ば無理やり決められた広報委員だが、一度も活動に参加したことはなかった。
 否。
 こんな底辺校で仕事をする委員会の方が珍しい。
 拓は数少ない真面目な奴らと美化委員とやらに入り、週一回学校周りを清掃している。
 はじめのうちは馬鹿にしていたが、今はそっちに入れば良かったと思った。
 拓のいない集会ほどつまらないものはない。
 第二会議室を見つけて、明かりの漏れる扉を開く。
 俺は油断しきっていた。
 拓という存在が常にそばにいたから。
 この学校の水面下など知りもせず。
 知ろうともせず。
 乱れた風紀の中で起こる不祥事など。
 自分は無関係だと。
 目をつけられたりするはずがないと。

 勘違いしていた。
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