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秒針と時針のように
第5章 一周してわかること
 忍が怯えるように瞬きをする。
「てめ……何考えてんだ」
 こういうのを察知するのは本当に早い。
 オレはにいっと笑った。
 そして忍を胸元に引き寄せて両腕を下に固定する。
 目の前で向かい合う。
 四つん這いに近い姿勢にされた忍がオレを見上げる。
 はあはあと息をしながら。
「なにすん……っく」
 首筋に吸い付いた途端肩が強張る。
 バシャバシャと足をばたつかせて。
 熱い肌に舌を這わせる。
「は、んん……あ、く」
 必死で逃れようと顔を背けるが、力が入らない。
 オレは忍の両手を束ねて片手で押さえつけ、もう片方の手で顎を掴む。
 それから額を合わせて見つめ合った。
 忍が熱い息と共に囁く。
「硫黄に中てられて狂ったんじゃねえの……?」
 長い睫から滴が垂れて唇に伝う。
「オレは正常だよ」
 言い返そうとした唇を塞ぐ。
 緩く開いた口に舌を入れて。
 チュクチュクと水音が鼓膜に響く。
 熱のせいで頭がぼうっとする。
「んむ……は」
 苦しそうに口を開く忍の舌を吸い上げる。
 ヂュルと厭らしい音が鳴る。
 それがまた理性を崩していく。
「た、く」
 忍が苦しそうに名前を呼ぶ。
「……しぬ」
 そしてフッと湯に顔を沈めた。
「忍!?」
 急いで担ぎ上げると忍は気絶していた。
 ペチペチと頬を叩いても反応しない。
 ただ荒く息を繰り返す。
 湯が注がれる音だけが響く中、オレは忍を抱きしめた。
「……ごめん」
 何故か涙腺がツンと刺激された。
 涙が眼球の前で揺れている。
「ほんとごめん。忍……」
 なんだ。
 この酷い罪悪感。
 フラッシュバックのように中学二年の忍が目の前に浮かぶ。
 暗くなった教室で倒れる忍が。
 信じられない写真が。
 濡れた太ももが。
 口移しした水の感覚が。
「最低だ……」
 激しい頭痛に顔を歪めながら忍を部屋に連れて行った。
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