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秒針と時針のように
第1章 gloss-プロローグ-
辺りは暗くなっていた。
忍の隣に横たわる。
真っ赤な花が沢山散ったうなじに、また新しいのを足す。
鬱血になるくらい。
モゾと脚が動いたが、目を覚まさない。
冷たくなる体の中で、オレは今朝の忍を思い出していた。
玄関で悪態を吐きながら、フラついた時触れた腰を。
柔らかな髪が揺れ、甘い香りがしたことを。
伏せ目の時の長い睫毛。
今は涙に沈んでいる。
あんなに綺麗だった忍を、たった一日で穢してしまった罪悪感と優越感。
細い体を抱く。
「忍……」
「ん?」
起きていた。
オレは少し怯む。
しかし、忍は戻そうとしたオレの手に指を絡ませた。
「……なんだよ」
「いや、なんでもない」
「そうか? じゃあ、寝かせろ」
オレは心臓がバクバクしていた。
馬鹿らしいことかもしれないが、忍を抱いている時よりも、胸が騒いでいた。
絡んだ指に狂わされる。
オレは一睡も出来ないまま、忍が起きるのを待った。
足音が遠ざかる。
オレは目を開き、忍がキッチンに入るのを聞いた。
ザーッと水音がする。
フライパンを洗う音。
床を拭く音。
シャワーに入る音。
少しずつ、少しずつ元に戻していく音。
日常を。
親友を。
オレは壁を見たまま、聞いていた。
忍はベッドにもたれると、ドライヤーを始めた。
水滴がたまに飛んでくる。
暖かい風も。
ゴムで縛る。
それからオレの上に被った布団を掴むとバサッと剥がした。
「起きろっ! てめぇはいつまで人のベッドに阿呆面かまして寝てる気だ、ああっ!? 大学の休みならバイトでもなんでもしてこいってんだよ!」
オレは身を起こして忍を見つめる。
「つうか服着ろっ! そんなんだから風邪引いて頭おかしくなんだろうがっ!」
顔に投げられた忍の服を手に取る。
身長は近いが、ほっそりした身と同じでオレのよりも小さい。
「貸してやるから十秒で着替えろ」
オレは肩をすくめて服を着る。
やはり少しキツい。
でも今は文句なんて言えない。
言えるわけがない。
「今から買い物行ってくるからあとで380円払えよ」
「……なんでだよ」
忍はオレの声に一瞬ビクリとする。
すぐに不機嫌な顔に戻って、玄関を開ける。
「てめぇが零したドレッシング、買い直しに行くんだよっ!」
忍の隣に横たわる。
真っ赤な花が沢山散ったうなじに、また新しいのを足す。
鬱血になるくらい。
モゾと脚が動いたが、目を覚まさない。
冷たくなる体の中で、オレは今朝の忍を思い出していた。
玄関で悪態を吐きながら、フラついた時触れた腰を。
柔らかな髪が揺れ、甘い香りがしたことを。
伏せ目の時の長い睫毛。
今は涙に沈んでいる。
あんなに綺麗だった忍を、たった一日で穢してしまった罪悪感と優越感。
細い体を抱く。
「忍……」
「ん?」
起きていた。
オレは少し怯む。
しかし、忍は戻そうとしたオレの手に指を絡ませた。
「……なんだよ」
「いや、なんでもない」
「そうか? じゃあ、寝かせろ」
オレは心臓がバクバクしていた。
馬鹿らしいことかもしれないが、忍を抱いている時よりも、胸が騒いでいた。
絡んだ指に狂わされる。
オレは一睡も出来ないまま、忍が起きるのを待った。
足音が遠ざかる。
オレは目を開き、忍がキッチンに入るのを聞いた。
ザーッと水音がする。
フライパンを洗う音。
床を拭く音。
シャワーに入る音。
少しずつ、少しずつ元に戻していく音。
日常を。
親友を。
オレは壁を見たまま、聞いていた。
忍はベッドにもたれると、ドライヤーを始めた。
水滴がたまに飛んでくる。
暖かい風も。
ゴムで縛る。
それからオレの上に被った布団を掴むとバサッと剥がした。
「起きろっ! てめぇはいつまで人のベッドに阿呆面かまして寝てる気だ、ああっ!? 大学の休みならバイトでもなんでもしてこいってんだよ!」
オレは身を起こして忍を見つめる。
「つうか服着ろっ! そんなんだから風邪引いて頭おかしくなんだろうがっ!」
顔に投げられた忍の服を手に取る。
身長は近いが、ほっそりした身と同じでオレのよりも小さい。
「貸してやるから十秒で着替えろ」
オレは肩をすくめて服を着る。
やはり少しキツい。
でも今は文句なんて言えない。
言えるわけがない。
「今から買い物行ってくるからあとで380円払えよ」
「……なんでだよ」
忍はオレの声に一瞬ビクリとする。
すぐに不機嫌な顔に戻って、玄関を開ける。
「てめぇが零したドレッシング、買い直しに行くんだよっ!」