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秒針と時針のように
第6章 時針が止まる時
 初めて会ったとき、話したいって思った

 不機嫌そうにクラスメイトを眺める眼

 細くて白い手足

 すっとした鼻

 女の子みたいな髪

 話しかけずらい威圧感

 そんなんなのに何故か惹かれた

 笑わせてみたかった

 こっちを見てほしかった

 ただ、それだけだった

 オレはね

 けど忍

 お前はどうだった

 やっぱ迷惑な五月蝿いガキでしかなかったのかな、オレは

 なあ

 今さらだけど

 そんな話もしよう

 なあ

 頼むから




「眼を開けろよ、忍!」
 医者がオレを羽交い締めにして押さえるが、力の限り忍に近づく。
 白い台の上で布を被って眼を瞑る忍を。
「う……嘘だろうが! こんなんありえねえだろうがっ! 起きろよ、帰るぞ! 今夜はすき焼きだろっ。起きなきゃ食えねえんだぞ!」
 白い横顔。
 白い首。
 血の気の引いた、冷たい体。
 こんなん違う。
 絶対違う。
 こんな簡単に失うわけない。
「非常に残念ですが……」
「ナニが?」
 医者を睨み付ける。
 つかつかと詰めよって白衣を鷲掴みにする。
「忍のナニが残念ですが?」
 眼を逸らす。
 やめろよ。
 そんなリアルな反応。
 信じちゃうだろうが。
 やめろよ。
 哀れな眼で見るなよ。
 ふざけんなよ。
「ふざけんなよっ!」
 医者を思いきり壁に押しやる。
 看護師たちが手を差しのべ引き起こした。
 石津という医者は服を正しもせずに小さな声で言った。
「申し訳ありません……」
 あ。
 なんかが弾けた。
 目の前で。
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