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秒針と時針のように
第6章 時針が止まる時
「岸本様。お呼びです」
葬儀の関係者が後ろから進み出た。
彼女は言いかけた口を閉じてオレを見た。
「いいや……私の性格じゃないもの。忘れないでしょ、貴方は。その秘密が有る限り、あの子を。忘れたらすぐに消しに行くけど」
クッと彼女は笑んだ。
「あの」
「そうそう。あの子の部屋は買い取ったから好きにしなさい。これ、鍵」
そういって鍵を手渡すと、すぐに裏手の方に消えてしまった。
手のなかの鍵を見下ろす。
「……秘密?」
忍。
お前は何を隠してたんだ。
記憶?
中学のときの?
結婚てなんのことだ。
母親と縁を切るのは嫌いだからじゃなかったのか。
オレが関係してる?
初耳だよ、忍。
聞いたこと、無かったぞ。
あんなに喋ったのに。
カチカチ。
時計?
違う。
聞こえるのは木魚の音。
忍。
灰になるのか。
もう二度と話せなくなるのか。
なんで。
なんでお前が。
手を握りしめる。
ううん。
それはもう……問わなくていい。
忍。
真っ直ぐに見上げるからさ。
手を振ってくれよな。
カチカチ……
いつになったら止まるんだ。
この音。