この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
秒針と時針のように
第6章 時針が止まる時

 封筒の口を開く。
 左手で中を膨らませるよう力を入れて、指をそこに入れる。
 カサリ。
 紙だ。
 引き出してみる。
 四つ折りにされた紙片。
 生唾を飲み込む。
 数秒間迷ってから、それを広げた。
「この変態め。やっぱり俺が見てない間に見つけやがったな」
 噴き出してしまった。
「こんな書き出しがあるかよ……忍」
 わかってたんだ。
 じゃあ、いつか読むオレに宛てた手紙?
 ドクドクと耳に血流を感じる。
「これをてめぇが見てるんなら俺はまだ言えてないんだろうな。情けない。結局こんな手紙なんてダサい手でしか伝えらんねえんだ。拓。今なにしてる? 俺を怒らせて自宅待機中か。大学卒業してたらやだな。どこまで俺は臆病だって話だ」
「今なにしてる、じゃねえよ……」
 涙が頬を伝う。
 日差しがカーテンの隙間から零れてくる。
「俺がアメリカ行ったの覚えてるか? なんで留学なんかっててめぇは駄々こねてたよな。そんで就職はアメリカ関係じゃないんだから不思議に思っただろ。いや、思わないか。てめぇは」
 そうだ。
 確かにそうだ。
 今さらだ。
「あっちで知り合った奴が、その……同性愛の専門家っつうかなんつうか。書いてて意味わかんねえけど、とにかくそこで俺は色々法律とか学んだんだよ、マジで」
「は? なにしてんだよ、忍」
 それを真面目に学んでる忍を想像して笑いが込み上げた。
「で、俺は! クソ、字でもやなもんだなコレ」
 そこから勢いに任せたみたいな字体。
「俺はてめぇと一生一緒にいたいんだ」
 瞬きを何度かした。
 脳に文字が入ってこなくて。
 心臓が止まったかと思った。
 紙をクシャクシャにしてしまいそうなくらい手に変に力がこもる。
「し、のぶ?」
 嬉しいのに。
 涙が止まんないのに。
 聞きたくて聞きたくて仕方なかった言葉なのに。
 唇が震える。
 言葉が見つからない。
 カチカチ。
 カチ。
 瞬きを何回しても世界が濡れてる。
 忍。

 なんで抱き締めたいのにお前はいないんだ
/116ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ