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Gemini
第2章 キスの味
「また明日続きをしようね?」
筆記用具を片付けながら言うノア。

(ど、ど、どっちの?)
勉強しながらもノアの唇が気になって仕方なかった私は、すぐに返事ができなかった。

「数学の話だよ」
拳を口元に当てて笑いを堪えながらノアが言った。

(ウソ…心の声、漏れてた?!)

「わ、分かってるよ」
ごまかしきれてないのが、ノアの表情で分かる。


トートバッグにペンケースをしまうその無造作な指の動きまで美しいと感じるのは、やっぱり顔が美しいせいなのかな…

「ノアって綺麗だよね」

「かっこいい、じゃなくて?綺麗?」

「え、いや、もちろんかっこいいんだけど」

「Merci…カナデはかわいいよ、とても」

「メルシー」
とってつけたような「かわいい」に、お礼を言う。

ドアに向かっていく腕をぐいっと掴まれて、抱き寄せられた。

「また明日ね」

かがみ込むようにして唇を重ねてきたノアの胸に手をつくと、ぎゅっと服を掴んでしまう。当たり前のように入ってくる舌に吸いついて、もっともっとと欲しがってしまう。

おでこに唇が触れるだけで恥ずかしかったのがウソみたい。

ノアのこと、好きなのかもしれない。

ノアが出ていった玄関のドアを見つめたまま、しばらくボケーっとしてた。


部屋に戻ってベッドに寝ると、ノアの唇の感触を思い出す。手頃なぬいぐるみを手に取って唇に当ててみる。フワフワした毛の感触はノアとは全然違った。

また明日ノアに会えると思うと、胸がぎゅっとなった。
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