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第3章 悪戯な笑み

次の日、約束の時間の少し前にノアが来た。靴を脱いで入るとすぐほっぺにキスをしてくれた。


「今日は暑かったね」

シャツの袖を折りながらそう話しはじめたノアが大人に見えて、ドキッとした。

「窓、少し開けようか？」

マンションの共有の廊下に面した窓、いつもは閉めてるけどほんの少しだけ開けた。


昨日の数学の続きをしてるのに、私はノアの指が気になって仕方なかった。昨日あの指で撫でられたのを思い出すだけで、首筋や肩がカッと熱くなってくる。

「カーナーデ、集中しなさい」

「はーい」

「いい子だね」
子供にするみたいに、頭をヨシヨシと撫でられる。今日はそんなのも嬉しく感じてしまう。

「この問題終わったら、化学教えてくれる？」

「化学かぁ…覚えてるかな」
机の反対側に置いてある化学の教科書に手を伸ばしたノアの顔が、ぐっと私に近づいた。

また心臓がドキッとして顔が赤くなるのが分かる。

フッと微笑んだノアは反対の手で私のことを抱き寄せるとキスをした。チュッという軽いキスは一度だけ。すぐに唇を舌で舐められる。

「…っふ…んっ…」

くすぐったい気持ちよさに鼻から息が漏れていく。

少しだけ入ってきた舌先に舌で触れると、それに反応するみたいに唇の重なりが深くなった。

チュッ…チュプッ……ジュッ…


「みーちゃった！」

びっくりして振り向くと、１０cmくらい開かれた窓の隙間からルカの顔が見えた。

言葉も出せない私。
おでこに手を当ててため息ついてるノア。


「とりあえず…入れてくれる？」
ルカは笑ってるように見えたけど、目は鋭く私を見ていた。

そう言われてしょうがなく部屋に迎え入れた。ノアは机の近くに座ったままでいたけど、その隣に座るのもはばかられて、私はぬいぐるみを抱えてベッドに座った。