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Gemini
第13章 花火大会の夜
エレベーターホールに着いた途端、降りてきたのはノアだった。

ドキッと心臓が止まって、無意識にポケットの中に隠したパンツを握りしめた。

「帰るところ?」

グリーンの瞳が光った。
微笑んでるのに笑ってない…。

「う…」
「それ、ルカの服だね」

「あ…」
「また、悪いことしてたんだ」

「そ…」
「手に持ってるのは何?」

巾着をすっと後ろに隠した。
「浴衣はどうしたの?」

「え…」

「悪い子だね」
ノアが近づいて、私は観念する。


「おー、早かったな?」
後ろからルカの声がした。

「俺いないからって好き放題して、まったく」

「好き放題?そうか??」
ルカが私の顔を見た。

「行くぞ、ほら」

「どこ?」

「ちょっとクリーニング屋」
ルカは私の背中に手を回して、ファン♪と音を鳴らして開いたドアの中に入り込む。

「じゃあね、カナデ」
ノアが手をあげてくれたので、私も手をあげ…ようとしたら、ルカがその手を邪魔して、キスしてきた。

「ちょっと!」
絶対に、扉は締まり切ってなかった。

「帰ってくんのが、早すぎんだよ」
ルカはすぐに離れたけど…


私だけエレベーターをおりて、家に向かう。

(なんでああいうことばっかりするんだろう)

巾着から鍵を出すとき、チラッとスマホが見えて思い出す。
(あ!和樹…)


部屋に戻ってスマホを見たけど、もう10時をとっくに過ぎていた。和樹からも何もきてなかった。
私から何かアクションを…とも思ったけど、やっぱり思いとどまる。

(さすがに遅すぎるし…)

シャワーを浴びて、洗濯をセットした。ポケットから出したパンツも、ルカの服も全部入れて。

花火でのことも洗濯してキレイになったらいいのにな。


あのまま帰ってたら、きっともっとずっとモヤモヤしてただろう。

ルカのおかげで少し和らいだような気が…しないでも…ない。
ちょっとだけ感謝して眠りについた。
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