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Gemini
第20章 海鳴り
ルカが持っていた燃えかす入りのペットボトルも、ゴミを纏めたビニール袋も投げだされていた。砂の上に背中をついたルカの腕には私が収まっていた。

「っぶねーな」

(ごめん。大丈夫?)
(ありがとう)
そんなことを伝えるつもりだったのに…。
口から出てきたのはまったく別の言葉だった。

「ルカ…」

「んあ?」

「ルカがいい」

「え?」

「ルカが…」
もう一度言いかけたところで、車から出てきたノアが私をルカから離して抱き起こした。

「大丈夫?カナデ」
スカートについた砂を払いながら優しく言った。
「痛いところはない?」

ルカは自分で起き上がって、パンッと一度だけ払うと少し遠くに飛んだゴミを拾った。

「たまちゃんから、今日はカナデと寝たいから下の部屋で先に寝ててって連絡あったよ」

「えー?!」
残念そうな顔をしてしまった。
もう十分だったけど、まだ一緒にいたかった。

「東京に帰ってからだっていつでも会えるでしょ。家族なんだから」
ノアが優しく頭をポンポンとした。

「家族…」
引っかかったその言葉だけ、ポツリと口から出てしまった。


「よっしゃ、飯食って戻ろう」
ルカが運転席に乗り込んだ。ノアの隣を避けて、私が助手席に座った。

街に戻る途中にある沖縄そばのお店で夕食を済ませて、ホテルに戻る。


最後の夜もふたりとは別の場所で眠った。
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