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Gemini
第23章 バランス
「ありがと。桃だよね?ダイニングテーブルに置いてってくれる?」

いつも通り王子様な微笑みでそう言ったノア。
私はうんうんうんと声も出せずにただ何度も頷いてから、転がった桃を拾って袋に戻した。

両手で髪を後ろにかきあげたノアは怖いくらいに綺麗で、もう目を見ることもできなかった。


袋をもってノアの前を通り過ぎるとき、チラッと部屋の中を見た。
想像通り、ベッドの上に裸の女の人がいた。
でもそれは想像していた状態とはかけ離れた姿。

一瞬だけしか見なかったけど、衝撃的過ぎて目に焼き付いてしまって、家に帰ってからも忘れることは出来なかった。


目隠しされたその人の顎には赤いボールが押し出されていて、手首と足首には黒いベルトが巻かれていた。開かれた足の間で、差し込まれたものがクネクネと動いているのまで見えてしまった。

(あれは見ちゃいけないものだ…)

(あんな趣味がノアにあるなんて…)

飛び出しそうだった心臓が少し落ち着きを取り戻すと、今度はお腹の奥の方がズンズンと脈打ちだした。


私が出たあとまた続きを…そう思うと、その疼きは更に強くなっていった。ベッドに寝転がって目を閉じて治めるために手を伸ばした。

ノアの意地悪の延長線上にあれがあるのだとすると、きっと私もそのライン上にいるのではないだろうか…

甘い痺れはしばらく私の中から消えることは無かった。
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