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Gemini
第1章 家庭教師
「カナデ…」

ノアの舌がまた私の唇をつつっと舐めたとき、体がムズッとするような感覚が走った。自然としがみついた手に力が入って、ノアは私のことを抱き寄せて…まるで抱きしめあってるみたいになった。

ファン♪

エレベーターが止まる音が聞こえて、夢見心地の世界から現実に引き戻された。恥ずかしくなって体を離すと、ノアの手も私の体から離れた。

「ぁ…私…」

もう帰る…と言いかけた時だった。
ノアの家のドアが開いて、中から女の人が出てきた。眼鏡をかけた真面目そうな人だった。玄関の傍にいた私たちとは黙ったまますれ違って、いなくなった。

(あの人がさっきまでルカと…)

生々しい声を思い出して、恥ずかしくなる。

「帰るね…」

ノアの顔も見ずそれだけ告げると、ノアの声が背中から聞こえてくる。

「カナデ、スマホありがとね」

エレベーターホールであの女の人と鉢合わせするのも嫌だったから、階段を駆け下りて家に帰った。


(ノアとキス…しちゃった。いとこなのに。)

ベッドの上で思い出すと、恥ずかしくなってくる。

あの女の人がルカを呼ぶ声も、耳を離れない。
(ノアもあんなこと、誰かとしてるのかな…)

唇を指でなぞるとまた体がムズッとした。


(ノアだったら、私…)

一瞬過ぎったエッチな想像が妙にリアルすぎて、足をバタバタさせてかき消す。

お下がりでもらったこのダブルベッド。パパとママが使ってたものを私が普通に使ってるけど、二人が仲良かった頃はきっとこのベッドでも…そう考えるとまたジタバタしてしまう。

ベッドの三分の一を占めているぬいぐるみたちを、手当たり次第抱え込んでベッドの上を何度も転がった。
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