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Gemini
第7章 痕跡
ノアの指は戸惑ってる私を絡めとって、マンションの中へと連れていく。
至近距離で感じるノアの香りに誘われるように、その手を振りほどくことなんてできない。


エレベーターの扉が閉まると、グイッと強引に腰を抱き寄せられた。目の前に迫るノアの瞳は、やっぱり綺麗で見とれてしまう。
唇をこじ開けて隙間から入ってきたノアは、私の舌の形を確かめるみたいに舌の付け根から舌先まで全ての場所を辿った。

「んーっ…んんっ…んー」
後ろから頭を抑えられて、ノアのキスから逃れられない。舌の縁を撫でてくれる舌先を捕らえようと、私の舌先も動き出したとき、ノアの柔らかな唇が離れていった。私の舌は急に一人ぼっちにされてしまったのだ。

「ボタン…押し忘れてた」
息を感じる距離でそう動いた唇に、今度は私から唇を重ねた。背の高いノアにしがみつくみたいに腕を回す。

「んっ…んふっ…ん…」
流れてくるノアの唾液を体の中に取り込むと、熱が出たときみたいなフワフワ感に包まれる。

階に到着したことを知らせる音をさせながら、エレベーターの動きがゆっくりになった。
ジュブブッと空気を震わせるような大きな音を立てて、口の中で溶け合っていた私とノアの唾液が吸い上げられた。

「おいで」
手を引かれるままにノアについていく私。頭は麻痺してるみたいに、ノア以外見えない。
ノアは長く細い人差し指をしーっと唇に当てて私に見せてから、自分の家の鍵を開けた。

玄関をはいって右側のノアの部屋。左側にはルカの部屋がある。私は挨拶もせず、黙ったままノアの部屋に入り込んだ。

スッとのびてきたノアの手で教科書の入ったバッグが私の肩から外され、床に置かれた。そしてその手に吸い寄せられるように、私はまたノアの胸の中に収まった。
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