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Gemini
第2章 キスの味
ノアの家庭教師は基本週に一度。試験前だけ回数が増える。来週から試験だから、今週と来週は週二だ。

普段は生活時間が違いすぎて、めったに顔を合わせないいとこたちだけど、ノアとキスしたあの日から二日連続でバッティングした。

「おかえり、カナデ」
郵便受けを開けてたらルカに声をかけられた。昨日の今日でなかなかまともにルカの顔を見ることが出来なかった。

「ただいま」
すっとルカの横を通り抜けようとすると、バッと手を伸ばして通せんぼされた。

「また髪伸ばせば?
俺は長い方が好きなんだよね」

肩上まで切ったばかりの私の髪に指を通しながらそんなことを言ってくる。ノアよりもちょっとお調子者なルカは、そうやっていつもちょっかいを出してくる。

(そう言えばあの時のヒトも髪長かったかも)

目を合わせない私の異変に気づいたのか、その日は特にしつこかった。
「なーんで、そんな態度なんだよー」

「いつも通りだよ。もぉ…通してよ」

「なんだよ一緒に行こうよ。
バイト帰りで疲れてんの、優しくして。」

肩に手を回されて寄りかかられると、ふわっとノアと似た匂いを感じる。柔軟剤かな?
ノアと同じ整った顔が近くにあると、やっぱり目のやり場に困る。

ピンポーン♪
あっという間に私の階に着いた。

「ノアばっかじゃなくてオレとも遊ぼう」

「遊んでないよ、勉強、教えて貰ってるの」

締まりかけた扉の向こうでルカがニヤッと笑った。
「どうせ二人で…」

静かに閉じた扉の向こうで、ルカはなんて言ったんだろう。キス…したこと知ってるのかな。まさか…ノアが言っちゃったとか…?

ルカがどう思ってるかは知らないけど、少なくとも一昨日のあの時までは、真面目に勉強を教えて貰ってたんだから。
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