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Gemini
第2章 キスの味
その次の日は駅で声をかけられた。

「カナデ、おかえり」
後ろから肩をポンと叩いたのはノアだった。

「た、ただいま。」
触れられた肩がポッと熱くなった気がした。

「バッグ持とうか?」
試験前で教科書がたくさん詰まった学校のバッグに手を伸ばすノア。

「大丈夫っ!」
不意に近づいてきた顔に心臓がバクバクしてしまい、冷たい言い方になっちゃった。

「どうかしたの?」

(どうかした?って、キスしたじゃん!)

ムカッとしてノアの顔を見上げると、すべて見透かしたようないたずらっ子みたいな顔で笑ってた。
ちょっとルカっぽい表情だなってうっかり目を合わせてしまうと、ノアが耳元に顔を近づけてきた。

「カナデ、いい?」
ノアが私の顔に手を伸ばそうとしてくる。

「なっ…こんっ…ちょっ…」

飛び退くようにしてノアから距離をとると、愉快そうに笑った。
「冗談だよ。くっくっくっ…」

「ふんっ」
ぷいっとノアに背を向けて、家に向かって早足で歩き始めた。でも足の長さが違うからか、直ぐに追いつかれてバッグもサッと奪われてしまった。

「こんなに重いの、よく頑張ったね」

頭をポンポンされても全然嬉しくない。だってまるで子供扱いなんだもん。

「明日は数学にする?物理は平気そう?」

「…数学」

「カナデは理系に進むの?」

「まだ分かんないけど、社会苦手だから」

「歴史?」

「全部…かな」

「へぇ。ま、俺は漢字が苦手だけどね」

「そうなの?ノアにも苦手があるんだ…」

いつの間にかノアのペースに乗せられてしゃべっちゃってた自分に気づく。マンションに近づく頃には人も少なくなってきていた。
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