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アンケートから生まれた Love story
第12章 痛みを、強さに
「それ貸せ。 俺が燃やしてやる」
丸めて小さくなった退職届を、瀬名さんが俺の手から乱暴にひったくった。
再び取り出されたライターと一緒に
フェンスの外側に持ち上げてスタンバイされる。
「……瀬名さん、ドラマみたいでかっこいいけどダメですよ。
病院の屋上で火つけるとか」
「バレねぇって、この高さなら。
灰になって消えるだけだ」
「すぐ後ろに監視カメラあります」
「……」
冷静に指差した先を睨みつけて、チッと舌打ちをする瀬名さん。
引っ込みがつかなくなったその手だけど
ポケットに閉まったのはライターだけだった。
「仕方ねーな」
「……!」
「物語を締めくくるラストシーンは
よくあるもうひとつの演出にするか」
─── 真ん中の文字がふたつに割れて
重ねた紙が、次々と小さくちぎられていく。
「……っ」
方向が変わった、夏の風が
広げた瀬名さんの手のひらから、空に向かって放たれた。
雲ひとつない青空に
太陽に照らされて、白く光り輝きながら
飛べそうな心が、連動するように……
「……正解だな、タカ。
こっちの方が本来の意味に近い」
舞い散る紙吹雪を見つめて、微笑んだ瀬名さんがそう呟いたから
込み上げる想いでいっぱいで
最後の一切れが消えるまで、俺は何も言葉にすることが出来なかった ───