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寵愛の小鳥
第8章 籠の中
「…うん…大丈夫だから……」

遠くでお兄ちゃんの声が聴こえる。

「……ん…」

ゆっくりとまぶたをあけると、
見たことの無い天井があって、
知らないベッドに寝ている事に気づく。

カーテンの奥から月明かりが見えて、
今が夜な事を理解して、
一瞬ヒヤッとする。

こんな夜遅くになるまで
遊んだことなんて無いや…
お母さん心配してないかな…
なんて思っていたけど、

さっきのお兄ちゃんの会話は
お母さんへの電話なのかなと思うと、
もう、
どうでも良くなった。

ごろんと掛け布団を巻き込んで
寝返りを打つと、
ベッドからお兄ちゃんの香りがして
心臓がズキンと痛んだ。

……悪い夢を見ていたんだよ、きっと。
お兄ちゃんがあんなに酷い事するはず無い……。

…そう願いたいのに、
現実は状況が物語っている。

酷く身体がだるくて、
下腹部に重くて鈍い痛みがある。

そっと掛け布団をめくると、
自分は全裸の姿。

腕には服が巻き付けられてたから、
シワのような痕がついてる。

そして今居る部屋が、
たぶんお兄ちゃんの家……。

「あぁ、大丈夫だから。
明日の夕方にはちゃんと帰るよう言うよ。
…うん、じゃぁ」

電話の声が大きく聞こえて、
扉のすぐ近くにお兄ちゃんが近づいてると感じてあわてて寝た振りをする。

すぐにガチャリと音がして、
お兄ちゃんが入ってくる。
近づいてくる気配に震えないように必死に堪える。


「……ことり…?」


小さく、お兄ちゃんの声が聴こえる。

枕元まで来て、お兄ちゃんの手が頭に触れたとたん、
身体がびくっと震えてしまった。


(あっ…)


すぐにお兄ちゃんの手は離れていって、
ベッドサイドに布が置かれた。

「……服、置いとくから、着たら隣の部屋に来て」

少し硬い声でお兄ちゃんが
そう呟いてすぐに去っていく。


その声に胸が苦しくなって涙が溢れ出す。

(お兄ちゃん…なんで…っなんであんな、事…!)
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