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寵愛の小鳥
第4章 夕日の丘
「さ、着いたぞ」
「うんっ…わぁっ…綺麗!」

自分の住む街が全部観れるこの丘で、
オレンジに光った世界に見惚れた。

「おにいちゃん!観て!私の家観えるよ!」
「こら、今はお兄ちゃんじゃないだろ?」
「あはは、ごめんなさい、悠月さん!
ほら、すっごい綺麗だよ!」

「ん…ことり。…可愛いな…」

「…!?」

お兄ちゃんが真剣な顔でそう言ってきて、
ドキッと心臓が鳴った。

実の兄の、夕日に照らされた、男の人って顔に、
自分が女にみられてるって錯覚をした。

「ゆ、ゆづ…んっ」

真っ赤になって少し困った私に、
お兄ちゃんの顔は近づいてきた。

(ま、待って、もしかして、キスされる…!?)

慌ててギュッと目を瞑ったら、
左のまぶたの上にキスが落とされ、
右の頬にもチュッとキスされた。

「ったく、ことりが可愛すぎるから、
ホントにするとこだっただろ…?」

「う、ん…ゆ、ゆづ、悠月さん!?な、なんでっ…!」

「だーって、今日は恋人同士だろ?
あ、なんでって…
なんでホントにしてくれなかったの?って事か?」

悠月さんのいたずらっ子みたいな笑みに心拍数が上がって、顔がさらに真っ赤になる。

「〜〜〜!もう!そういうの、だめ!」
「ごめんな?飲み物買ってくるからさ、そこのベンチ座ってなよ」
「ココアがいい…」
「うん、行ってくるな?」



お兄ちゃん、

相手は、お兄ちゃん。

私の事、本当に恋人なんて思ってないから。
無い…よね?

でも、だって、兄妹だもん。

わかりきった事なはずなのに、
なんだか知らない男の人みたいにドキドキして、

変に意識しちゃう自分がすごく嫌だった。
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