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第1章 MOTHER（マザー）

｢行くのよ。｣
｢えっ？行くって…｣
｢あの家に行って、はぐいたらしい女からカネをパクるのよ!!とっとと行きな!!｣

孝二は、菜水に言われるがままに行動を起こした。

由宇加が家に入ろうとした時であった。

孝二が由宇加のもとにやって来て『お話しがあるけど…』と言うた。

｢ねえおねえちゃん。｣
｢あら坊や、どうしたのかなぁ？｣
｢お話ししたいけどいい？｣
｢お話しがしたいの？それだったら、おうちに入ったら？｣

由宇加は、孝二を家の中に入れた。

電柱の陰にいる菜水は、ニヤニヤとした表情で見つめている。

家の中にて…

孝二は由宇加にカネのサイソクをした。

孝二からカネをサイソクされた由宇加は、とまどい気味の声で孝二に言うた。

｢おカネ…なんでおカネがいるのよぉ…｣
｢おカネができたら返す…ほんの少しだけでいいから貸して。｣
｢ほんの少しって？｣
｢10万…｣
｢10万？｣
｢うん。｣
｢10万円を何に使うのよぉ～｣
｢おかーさんが困ってる…電気ガス水道止められた…アパートの家賃も払えないので困ってる…｣

由宇加は『それだったら市役所へ行ったらどうか。』と孝二に言うた。

｢おカネに困っているのであれば、市役所へ行って生活保護の申請をしたらどうかな？｣
｢断られた…｣
｢断られたって？｣
｢市役所に見離された…｣

孝二は、由宇加がおカネを出すまで帰らないと言うてその場に座り込んだ。

由宇加は、ものすごく困った表情を浮かべている。

｢何やってんのよあのバカ!!｣

遠くから見ている菜水は、イラついている。

それから120分後のことであった。

由宇加は、ものすごく困った表情を浮かべている。

孝二は、由宇加がカネを出すまで動かないと言うてイコジになっている。

困ったわ…

どうすればいいのよ…

ちょうどその時にしえ夫婦が帰宅した。

孝二は『ぼく、帰る…』と言うて裏口から出て行った。