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瀬音とボクとよしみくん
第16章 神様お願い
「本当だな?」


「はい」


お願い、信じて。


「よし、信じよう。副会長が不正するとは、わたしも思えない。何かの見間違いだったのだろう」


「そうだよ。よかった」


「もし、不正だったら、ペナルティーとして女装役をしてもらおうと思っていたが……」


え?


「疑ってすまなかった。さぁ、もう一度引いてくれ」


え、え?


「いや、さっきのは?」


「あ、つい戻してしまった。すまん、もう一度引いてくれ」


「えぇー? 次引いて、もしハズレ、じゃない、アタリだったらどうしてくれるの?」


「それをいうなら、さっきのがアタリだったかもしれないぞ。命拾いしたな」


かもじゃなくて、アタリだったの。


もう、余計な。


「……あの、そんなに疑うなら、不正ってことで、ボクが、女装役を……」


「いやいや、疑って本当にすまなかった。さぁ、引いてくれ」


あぁ、万事休す。


案の定、引いたくじはハズレ。


あからさまに残念がるボクに、なんら気にもとめずに次の生徒へと移っていく生徒会長。


しかも、次の生徒が、アタリを引いて大騒ぎする。


いいな。


「ぐわーー、なんでだ~、最悪だぁ、俺の人生終わった」


「よし、5人目が決まりだな。副会長、チェックを」


「たのむ。誰かかわってくれ。焼き肉食べ放題、おごるからよ」


え?


その手があったか。
アタリを引いた男子が、教室を見渡して叫んだ。


だけど、そんな提案を受ける者はいない。


ボク以外。


「あ、ボク、焼……」


肉大好きと、言い訳して、さっそく交代しようとしたが……


「いや、交代はいかなる理由も許されない。すでにチェック済みだ」


生徒会長は、教室を出ようとしていたのに、ボクの声をかき消して忠告する。


あぁ、これで本当に終わった。


これでラストチャンスは失われた。






瀬音くんとは、もう、お別れも言えない。
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